プラスチック材料
- プラスチック射出成形金型を設計するためには、使用する成形材料の特性を十分に知り尽くすことが重要です。 特に微妙な品質管理を必要とする成形品の場合にはなおさらです。 成形材料の特性データは、材料メーカーが提供する樹脂データと、実際にユーザーが使用による蓄積で得たデータがあります。 成形材料の特性データの中では、以下のファクターが重要です。 (1)成形収縮率 成形品の寸法を、ねらい通りのばらつき範囲内に抑えるためには、実用的な成形収縮率データが必要になります。 成形収縮率は、下記要因によって左右されます。 成形材料の種類 キャビティ表面温度 射出圧力 保圧の作用状況 ゲート位置 成形品の肉厚 流動方向 ガラス繊維等 これらのデータは成形条件を固定して、試験金型や実際の金型を使用して、サンプルを採取することが実務的です。
- プラスチック成形材料のペレットは、一般的に空気中の水分をある割合で吸水しています。 吸水量が多いと、射出成形機のシリンダーの中で溶融混練している過程で樹脂が加水分解を起こしたり(水を引き金として化学分解を起こす樹脂もあります)、射出成形した際に成形品の表面に銀条(シルバーストリーク)が走ったり、気泡、光沢不良、転写不良などを起こすことがあります。 そこで、成形材料のペレットは、あらかじめ乾燥装置に投入して水分を除去することが必要になります。 予備乾燥を適切に行わないと、流動性の変動や物性の低下、成形不良を引き起こす原因となります。 乾燥装置には、以下の種類が主に使用されています。 (1)熱風乾燥機 ホッパードライヤーと箱形乾燥炉が代表的な装置です。熱風をペレットに吹きかけて水部を蒸発させる方法です。 一般的な簡便な乾燥方法ですが、水分を充分に取り除きたい場合には適していません。
- ポリサルホンは、耐熱水性が良好な透明樹脂です。酸やアルカリにも強く、機械的特性も安定しています。 食品や医療用の安全性が良好なので、この分野では採用例が増えています。 ただし、有機溶剤に対しては弱いので注意が必要です。 ガラス繊維強化も行われています。 主な用途は次の通りです。タグ:
- 液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)は、耐熱性の良好な結晶性樹脂です。 ガラス繊維を30〜40%程度強化することで、荷重たわみ温度は270〜310℃程度まで上昇させることができるので、表面実装用対応用の精密電子部品に採用されています。 電気特性や振動吸収性能も良好です。自己消火性もあります。 溶融粘度は低く、流動性が良好なので、射出成形はしやすい樹脂です。その割には、冷却固化速度が速いので、ばりは発生しにくい長所を持っています。 反面、ウエルド部の接合強度が低いために成形品の形状によっては、工夫が必要になる場合があります。 また、流動方向と流動直角方向の成形収縮率に差がありあますので、金型設計にはノウハウの活用が必要になります。 金型の表面温度は、100〜150℃程度まで上げなければなりませんので、油による温度調節や電気ヒーターによる温度調節が必要になります。 ポリフェニレンサルファイドと並んで、電子部品用のスーパーエンプラとして各方面電子関連分野で採用が進んでいます。タグ:
- ポリプロピレンは、軽量で耐熱性の良好な結晶性樹脂です。半透明なグレードもあります。 ポリプロピレンは、特にヒンジ部の繰り返し疲労特性が良好で、他の樹脂に比べて優れた特徴を持っています。また、食品関係に使用しても安全性が良好なので、様々な容器類に利用されています。 ガラス繊維による強化も可能で、自動車部品にはこのタイプが多用されています。 溶融時の粘度が低いので、金型を製作する場合には、入れ子の分割面のクリアランスが大きすぎると、ばりが出やすいので注意が必要です。 また結晶性ですから、金型の温度管理状態によって成形収縮率も変動しやすいので、留意をします。 代表的な使用例としては、次のようなものがあります。タグ:
- ポリスチレンは、耐薬品性が良好な透明樹脂です。射出成形加工ができる樹脂として古くから多用されてきました。 家電の普及に従って、様々な分野で使用されている身近な存在でもあります。 粒状のゴム成分を分散させることによって、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が開発されたことで、大型家電の筐体に採用されるようになってきています。 また、食品容器関連ではいろいろなジャンルで実用化されています。透明なので、容器には適しています。 主な用途は、以下のようなものがあります。タグ:
- 最近商品化された透明なプラスチックです。非晶性樹脂であって、軽量、耐薬品性も良好です。 光学的特性では複屈折率が低く、アクリル樹脂と同水準の性能を有しています。また、吸水率も低く、耐熱性があるのでスチーム滅菌もできますから、薬品関連にも使いやすい特徴を持っています。 射出成形性にも優れており、光学分野や医療分野で実用化が進んでいます。 金型の転写性能も優秀です。 これからの新しい透明樹脂の一つとして注目されています。 これまでに開発された代表的な実用用途には、次のようなものがあります。タグ:
- ABS樹脂は、非晶性樹脂であって、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンからなる共重合体です。 汎用プラスチックの中では、安定した強さと美しい光沢が得られ、家電製品を中心に幅広く使用されています。 成形品の表面にめっきを施したり、スパッタリングも可能です。 ただし、屋外での耐候性が優秀ではない点が指摘される場合もあります。 ポリカーボネイトやPBT、ポリアミド等と、ポリマーアロイを構成させて使用する例も増えています。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- アクリル樹脂(メタクリル酸メチルエステル、PMMA)は、透明な非晶性の樹脂で、レンズや照明関係に古くから利用されています。 最近では、素材に他の化学成分を加えて改質が行われ、性能が向上されているグレードも各種開発されています。 アクリル樹脂の最大の特長は、光線透過率が優れている点です。樹脂の中では最も優れた性能を有しています。 また、表面硬度も高いので傷に対して抵抗力があります。コーティングにより硬度はさらに改良ができます。 耐候性も比較的良好な部類に属します。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ペットボトルに使用されている透明な飽和ポリエステル樹脂です。 耐薬品性、耐熱性が良好であるので、食品容器類を中心に利用されています。 また疲労強度も良好で、電気特性も優れています。 ガスバリア性は極めて優秀です。 しかし、フェノールやクレゾールには侵食されます。 射出成形やブロー成形で使用されています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)は、荷重たわみ温度が260℃近辺まで耐えられるスーパーエンプラです。 架橋型、半架橋型、直鎖型の種類があります。 はんだの融点よりも荷重たわみ温度が高いので、リフローはんだ用の表面実装対応の電子部品に多用されています。 流動性が良いために、射出成形ではバリが発生しやすい特徴があります。 金型温度は130〜150℃まで上げる必要がありますので、金型は油での温度調節やカートリッジヒータによる保温が必要です。 材料の価格は高価でしたが、量産効果によって最近ではリーズナブルな価格帯へ落ち着いてきています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- ポリカーボネイトは、透明で、強度が高い耐熱樹脂として、広い分野で応用が図られています。 最近では、ABS樹脂等とアロイにしたタイプも、工業用として多用されています。 非晶性であって、光線透過率も良好でありレンズやカバー類には好適な樹脂の一つです。強度的にも優秀で、特に耐衝撃性はプラスチックの中でも上位に位置しています。 ただし、有機溶剤には侵されるので、グリス類や溶剤が塗布されるような場合には注意が必要です。 射出成形では、流動性が悪いので、充填圧力は高めに設定しなければなりません。また金型温度も80℃程度まで上げる必要があります。 具体的な使用例としては、下記のような用途があります。タグ:
- POM樹脂(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)は、破壊強さ等の機械的特性や耐磨耗特性などが優れたエンジニアリングプラスチックです。 POMには、単独重合体(ホモポリマー)と共重合体(コポリマー)があります。 ホモポリマーとコポリマーでは、強度、耐熱性、成形条件などに差があります。 POM樹脂の最大の特長の一つとして、自己潤滑性があります。歯車や軸受けなど、常時、摩擦を受ける部品においては、重宝される機能です。 結晶化度も高いので、強度や耐熱性も良好な特性を示しています。 射出成形では、シリンダー内に長時間滞留させてしまうと熱分解を起こしますので、注意が必要です。 主要な用途は、次のようなものがあります。タグ:
- PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)は、耐熱性が良好で、機械強度の高いバランスのとれた樹脂です。 結晶性であり、有機溶剤や油類にも耐える特徴を有しています。 電気抵抗や誘電率も変化しにくく、電気電子用途にも多用されています。 ただし、加水分解を起こすために、高温の湯中での連続使用では注意が必要です。 ガラス繊維の強化によって、強度は改善されます。 主な用途は次のとおりです。タグ:
- ポリアミドは、ナイロン(商標名)として著名ですが、PA6、PA66、PA46、芳香族ポリアミドなどの種類があります。 特徴としては、摩擦磨耗特性が優れているので、騒音が発生しにくく、安定した摺動が得られます。 また有機溶剤や油に対する性能も優れています。 一方、吸水性や吸湿性が大きいので、成形品の寸法変化が見られます。 ガラス繊維による強化で、耐熱性や強度が改善されます。 主要な使用例は、下記のような事例があります。タグ:
- プラスチック成形材料には、強度を向上させる目的などで、様々な充填材や強化材がコンパウンドされます。 主な充填材には下記のようなものがあります。 ガラス(Glass) 炭素(Carbon) 炭酸カルシウム(Calcium carbonate) タルク(Talc) 雲母(Mica) 鉱物(Mineral) けい素(Silicon) 硼酸(Boron) クレイ(Clay) セルロース(Cellulose) アラミド(Aramid) 木材(Wood) 強化材がコンパウンドされますと、成形収縮率がナチュラル材と比較して小さくなったり、樹脂流動方向と直交方向で収縮率に差が発生したり、分子配向が顕著になったりすることがありますので、金型設計の際には留意が必要になります。
- ポリメチルペンテン(Polymethylpemtene)は、立体規則性ポリオレフィンであり、透明性のある成形材料です。 家電、医療機器、食品関係で採用されることが多い、結晶性プラスチックです。食器洗浄機部品、耐熱電子レンジコンテナ、アイロンの水入れ、回路基板、ピペット、注射器、ビーカー等に使用されています。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリエーテルイミド(Polyether imide、PEI)は、電子産業において活用されている成形材料です。非晶性プラスチックであり、ポリカーボネイトとポリマーアロイとして使用される例もあります。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリアミドイミド(Polyamide-imide、PAI)は、荷重たわみ温度が180℃程度であり、高温で高い強度を有する成形材料です。 ガラス繊維、カーボン繊維、グラファイトなどで強化したグレードは、高温環境において優れた摺動特性があります。 産業用途事例としては、油圧機器シール、リレー、ソケット、スイッチ、ボビン、ギヤ、ベアリング、内燃機関エンジン部品、ジェットエンジン部品、SMT部品などがあります。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリエーテルサルホン(Polyethersulfone、PES)は、耐熱水性に優れた非晶性プラスチックです。 食品産業用部品や排水用部品、半導体超純水関連部品、電子部品、ヘッドランプリフレクター、調理機器部品などに採用されています。 ガラス強化される場合もあります。 下記のような特徴があります。