ガススプリングとはシリンダー形状の一端をガススプリング用取り付けブラケットで固定し、他端を移動部に取り付けて使用する。その移動範囲内においてほぼ一定のスプリング力を発生することで、移動部品の荷重を支える機械要素部品である。
構造・用途・使用事例
構造
ガススプリングはその外観を図1に示す様に大径と小径の2軸構造の伸縮するシリンダー形状の部品で、小径軸が大径軸に収納される構造となる。
図1.ガススプリングの外観
ガススプリングの構造は2種類あり、求める反力の大きさによって内部構造が変わる。これをを図2に示す。両方共に太い径のチューブ内にオイル、圧縮ガスが封入されており、その中を細いロッドの他端に取り付いた小穴の開いたオリフィスが移動する構造となっている。またロッドが移動する際に力が発生する構造となる。
図2.ガススプリングの内部構造
太いシリンダーの内部に圧縮ガスとオイルが封入されており、細い軸と太い軸の軸方向に力を常に発生する。このガススプリングを固定台に取り付けるためのガススプリングブラケットを図3に示す。
図3.ガススプリング取り付けブラケット各種外観
このブラケットは目的の固定部に取り付ける際、様々な形状に対応できるよう複数の種類がある。
用途
ガススプリングは縮む方向に動くため伸縮動作の際、仕様に従った力を発生する。このため縮む際の動作にその落下荷重を支えるようになっている。例えば、人力でその負荷となる重量物を持ち上げる場合、このガススプリングのバネにかかる力が負荷の一部を受けて人力を補助する作用をする。
使用事例
ガススプリングの使用事例を図4に示す。
図4.扉に使用したガススプリングの使用事例
この使用事例は人手でヒンジを中心に回転動作で開く移動扉を側面から見た図である。力の方向は図に示す様に向かっており、ガススプリングが無い場合、作業者は移動扉に作用するモーメント力を支えなければならない。移動扉が重い場合、作業者に要求される力は大きくなる。ガススプリングを用いることにより作業者は移動扉によるモーメント力からガススプリングによるモーメント力を引いた力を支えれば良いことになり、その作業者の負担を軽減することが出来る。 図5に事務椅子に使用されているガススプリングの例を紹介する。
図5.椅子に使用したガススプリングの使用事例
ガススプリングはその中央部に設置されており、人が座った場合適度なばね特性と粘性効果で心地よい着座の座り心地を提供している。このガススプリングには新たな機能を付加して移動軸の高さ調整機能を付加して座面の初期高さを調整可能としている。
選定のポイント
ガススプリングによる荷重とストロークは荷重と移動範囲の仕様を決定すれば、これを満足するガススプリングが選定できる。選定のポイントは下記2点である。
移動ストロークと発生力による選定
ガススプリングの仕様を決める上で必要な移動ストロークと発生力を決める。その上で図6に諸元値を示す。
図6.ガススプリングの諸元値
ストロークは全長を考慮し、目的に合った長さを選定する。その際の注意点は発生力がどの範囲耐えられるかをしっかりと見極めること。例えば、型式15050Aの製品の場合ストロークが40mmの場合7kgとなる。 そのストロークと発生力の関係をグラフにしたものを図7に示す。
図7.ストロークと発生力の関係図
発生力のグラフを見ると、その関係がほぼフラットな特性でありその誤差は±15%程度である。
発生力を考慮した力の算出について図8を用いて説明する。
図8.ガススプリングの発生力を考慮した扉に作用する力の算出
扉が水平位置で止まっている時にガススプリングと引き上げ力でその位置を保っているわけであるが、ここで必要となる引き上げ力は回転中心におけるモーメントの釣り合いを考えれば良い。モーメントは荷重に腕の長さを乗じた数値で求めることが出来る。
- F2
- :引き上げ力
- F1
- :ガススプリング力
- W
- :重量
(F2)=(w × L2-F1cos(Θ) × L3)/L1
固定方法の選定
ガススプリングの固定法は目的に合わせたガススプリングブラケットを用いれば、容易で安価に実現できる。ガススプリングの取り付け穴をこのガススプリングブラケットの軸に差し込んで使用するわけである。軸を固定する際に注意する点は穴内で回転できる構造になっているかを確認する。具体的な固定方法の例を図9に示す。
図9.ガススプリングの固定手順
ガススプリングの穴にガススプリングブラケットの軸を挿入後、止め輪を用いてその軸方向の移動を規制した構造となっている。