電鋳は、機械加工できないものや、加工の困難な複雑な形状のものの表面状態、寸法精度について、細部にわたる正確な金属の複製を得るのに用いられてきましたが、最近は広範囲の分野への応用が開発されてきました。しかし、前述したように、電鋳には多くの短所もあるので、経済性よりも製品の品質や精度が重視される製品に用いられる場合が多いのです。電鋳は、次のような分野で利用されています。
1)複製品の製造
音楽レコード、コンパクトディスク、レーザーディスク、光ディスクなどの原盤。
プラスチック、レーザー(皮)、厚紙などの木目、ワニ皮模様、織物模様などの型付盤。
印刷刷版、捺染ロール、表面粗さ標準片、塗装のスプレーマスク、時計の文字盤など。
2)金型の製造
複雑な形状・デザインのプラスチック射出成形用金型、圧縮成形用金型、鉄鋼の連続鋳造用モールド、ガラス・アルミ・亜鉛ダイキャスト用耐熱金型、印刷活字の金型等の製造。
3)電鋳肉盛り (Electrosizing)
金型、ロール、シャフト、軸受け、ゲージ等の機械部品の寸法精度不足や、磨耗した部分の肉盛りによる修理、更正、補正。
4)電鋳組立 (Electroassenbly)
ビート管部品、導波管の接合、ダイヤモンドや炭化珪素等の研磨剤を固着した切削工具等の製造、各種複合材料の製造。
5)電着被覆 (Electrocladding)
鋼板のニッケル被覆、宝石、貴金属の飾り、プラスチック加工用・写真フィルム用・印刷用等のロール被覆、木やプラスチックを金属で被覆し、機械的強度や金属的外観を与える。
6)箔・薄板・シート・中空製品の製造
継目なし管、中空容器、銅製浮き子、容器、箔、シート、スクリーン、金網、フルイ、電気カミソリの外刃等の製造。
7)その他
寸法や表面状態の厳密なもので、他の方法では加工の困難な部品の製造。レーダー導波管、万年筆のキャップ、反射鏡、ベンチュリー管、曲折管、ベローズ(ジャバラ)、カム等の機械部品、楽器のホーン、精密電子部品、ジェットエンジンの部品、宇宙開発分野など。