昔は電鋳浴として安定した銅が主力でありましたが、電鋳の普及とともに電鋳金属の物性には多くの機能的要求が高まってきました。
ニッケルは物理的機械的強度が大きく、腐食、磨耗に対して優れており、電鋳ニッケルの硬度、電着応力、柔軟性などの物理的機械的性質を広い範囲で調節する技術が確立されました。
さらにスルファミン酸ニッケルにより、高電流密度で、低い電着応力の電鋳が可能になり、また、コバルトや各種金属と合金化したり、ファインセラミックス等の高硬度の微粉末を分散共析させて複合化し、常温ばかりでなく、高温における物理的機械的性質が改善されたことにより、装飾品、美術工芸品、電子部品、超精密部品など広い分野に応用されるようになりました。
これらの要求される特性に応えるための対策としては、次のようなことが求められます。
(1)電鋳はそのまま金属製品として使われるので、用途に適した強靭な、耐久性のある物性をもつこと。
(2)電鋳製品の応力腐食、金属疲労、製品の反り、亀裂の発生を防ぐため、電着応力が極めて小さいか、ゼロであること。
(3)厚く電着することが多いので、電解時間を短縮するため、高電流密度で高速度に電着させる必要がある。このため電鋳槽内を流れる電気量が大きくなるが、これに対して液が安定であること。
(4)電鋳製品の後加工を容易にするため、また均質な強度を得るため、厚さや金属組織を均一に電着させこと。
電鋳加工を行う上で注意すべき点を、【表1】に示しました。
【表1】電鋳の特徴
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