(12)ビニル樹脂塗料
この塗料は大別して、樹脂溶液をビヒクルとした「溶液形塗料」と、粉末樹脂を可塑剤(および少量の溶剤)に分散した「ゾル形塗料」に分けられます。塗膜の共通した特徴として防食性、とくに耐アルカリ性に富んでいます。作業性・付着性はよくないので、適切なプライマー塗装が必要です。
(1)塩/酢ビニル共重合樹脂塗料
塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂を塗膜主要素とする熱可塑性樹脂溶液形塗料で、普通、酢酸ビニルの含有量は9〜15%です。
この樹脂は、エステル、ケトンなどと芳香族炭化水素の混合物によくとけます。塗膜は耐水性、耐油性、耐薬品性に優れますが、顔料分散性がよくなく、高粘度のため作業性、肉のりが悪い特徴があります。
耐薬品性塗料として工場設備、タンク、パイプの内外装、機械工具類の防食塗装、船底塗装、可はく性塗装として用いられます。
(2)ビニルゾル塗料
ビニルゾル塗料は、塩化ビニル樹脂の微粉末を可塑剤または可塑剤+少量の溶剤に分散・懸濁させたペースト状の塗料です。
可塑剤に分散させたものを「プラスチゾル」、可塑剤+溶剤に分散させたものを「オルガノゾル」といいます。これらを170〜200℃に加熱すると、樹脂粒子同士が融着して塗膜を形成します。
ビニルゾル塗料には、次のような特徴があります。
1. | 無溶剤であるため、一回塗りでプラスチゾルは数mm、オルガノゾルは十分の数mm程度の従来の塗料では得られなかった厚膜を得ることができます。 | |
2. | 塗膜は、厚膜のため防食性、耐薬品性に優れています。 | |
3. | 機械的・化学的・電気的性質が優れています。焼き付け温度が高い。 | |
4. | 粘度を自由に調節できないため、特殊な塗装方法を必要とします。 |
用途は、
1. | 包装紙・布などの防水加工に、ロール塗装、浸漬塗装が行われます。 | |
2. | 鋼板やアルミニウム板にエンボスやプリントが可能で、皮や布のような感触、防音効果などを与えることができます。このような塗装金属板は、電気機器、建材、事務用機器、金族家具、車両、船舶などに広く用いられています。 | |
3. | 簡単なスプレーで、ちりめん塗装と同様な装飾塗装ができます。 | |
4. | その他、船舶用塗料、ストリッパブル(はがすことが可能な塗装)塗料などとして、広範囲に利用されています。 |