浸炭焼入れと類似の表面処理機能が得られる代表的な表面処理法について解説します。
(1)浸炭焼入れ法
- 駆動力を伝達する機素(カム、ギア、その他)には耐摩耗性と耐疲労性が必要です。そのため、表面の硬度と内部の靭性の相反する特性が必要です。浸炭焼入れは低炭素鋼の内部の靭性を維持したまま表面を硬化させる処理法です。
- 低炭素鋼(C<0.3%)を炭素雰囲気の高温炉で熱処理(浸炭温度:900〜930℃)することで表面のみを高炭素鋼化させ、その後に焼入れ処理を行います。
- 表面硬度はビッカース硬さ750以下。浸炭硬化深さは、浸炭処理による残留応力(圧縮)と表面の引張り応力をバランスさせるように選択するのが、しゅう動面の耐久性能向上には重要です。
- 合金鋼に浸炭処理を行うと、靭性の向上と表面硬化の両者が向上できます。はだ焼鋼:SNC、SNCM、SCr、などがJISで規定されています。
- 浸炭処理の方法は3種類(固体浸炭、液体浸炭、ガス浸炭)あります。品質の安定性ではガス浸炭法が優れています。
(2)浸炭焼入れと類似の特性が得られる表面処理法
表面硬化と内部靭性の相反する特性を得るには、上記の [1] 浸炭焼入れ以外に、[2] 窒化処理、[3] 硬質メッキ処理、[4] 硬質薄膜処理(化学蒸着法:CVD法、物理蒸着法:PVD法)が有ります。
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※ | CVD法:化学蒸着法、PVD法:物理蒸着法 |