樹脂温度
- 射出成形の条件として、樹脂温度と保圧がありますが、これらには密接な関係があります。射出成形が可能な領域、言い換えれば良品が成形加工できる領域は、無限にあるわけではなく、ある一定範囲の前提が満たされた場合に限定されます。 【図】には、樹脂温度と保圧の2元関係を図示しています。 この図からは、次のようなことが判ります。
- 射出成形に使用される熱可塑性樹脂(Thermoplastic resin)は、金型の中に加温されて液状になった状態でキャビティ内へ注入されて、金型の表面に接触することで熱量を奪われて冷却され、固化します。 このときに、液体のときの体積は、固化する際に体積収縮を起こして縮みます。この現象を「成形収縮」と呼んでいます。英語ではshrinkageと言います。 成形収縮は、プラスチック射出成形品を作る上では大変重要な物理現象です。所望の寸法や形状の射出成形品を生産するためにはこの物理現象を的確に理解しなければなりません。 さらに、射出成形金型の設計や機械工作をする際には、成形収縮を考慮した寸法と寸法公差でキャビティなどを作る必要があります。 成形収縮は、熱可塑性樹脂の種類によって大きく範囲が決定されます。つまり、樹脂の種類によって収縮率は左右されます。しかし、樹脂の種類以外にも以下の要素を考慮しなければなりません。
- 1.射出成形機の成形条件 プラスチック射出成形機を操作して実際の射出成形加工をするためには成形材料、金型とを用いて成形品の仕様にマッチングさせた状態の成形品を加工しなければなりません。単純に金型内に溶けたプラスチックを射出注入し、固化させて取り出しただけでは、成形品の寸法は大きくばらつき、外観の光沢や転写もむらが生じ、均一な品質の成形品を得ることはできません。 所望の品質の射出成形品を得るためには射出成形機の「成形条件」と呼ばれている各種の調整パラメータを調節し、寸法や外観の品質をコントロールしながら仕様を満たすように条件調整作業が必要になります。 つまり、成形条件の調整の良し悪しによって金型から生産されるプラスチック射出成形品の品質は左右されるということになります。この条件調整のパラメータの調整範囲が広ければ品質仕様を変化させられる範囲も広くなり調整がしやすくなります。「金型の出来が良い」と一般に言われる場合にはこのような条件調整の幅が広いことが多いです。翻って考えれば、金型設計の際には成形条件の調整幅が広く設定できるような配慮をしておくことが大切であると言えます。例えば、冷却回路の流量が十分に確保できるように設計する、ガスベントを的確に設けて高速充填しても焼けが発生しにくく工夫する等です。