射出成形:基礎知識(成形材料)
- ポリスチレンは、耐薬品性が良好な透明樹脂です。射出成形加工ができる樹脂として古くから多用されてきました。 家電の普及に従って、様々な分野で使用されている身近な存在でもあります。 粒状のゴム成分を分散させることによって、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が開発されたことで、大型家電の筐体に採用されるようになってきています。 また、食品容器関連ではいろいろなジャンルで実用化されています。透明なので、容器には適しています。 主な用途は、以下のようなものがあります。タグ:
- 最近商品化された透明なプラスチックです。非晶性樹脂であって、軽量、耐薬品性も良好です。 光学的特性では複屈折率が低く、アクリル樹脂と同水準の性能を有しています。また、吸水率も低く、耐熱性があるのでスチーム滅菌もできますから、薬品関連にも使いやすい特徴を持っています。 射出成形性にも優れており、光学分野や医療分野で実用化が進んでいます。 金型の転写性能も優秀です。 これからの新しい透明樹脂の一つとして注目されています。 これまでに開発された代表的な実用用途には、次のようなものがあります。タグ:
- ABS樹脂は、非晶性樹脂であって、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンからなる共重合体です。 汎用プラスチックの中では、安定した強さと美しい光沢が得られ、家電製品を中心に幅広く使用されています。 成形品の表面にめっきを施したり、スパッタリングも可能です。 ただし、屋外での耐候性が優秀ではない点が指摘される場合もあります。 ポリカーボネイトやPBT、ポリアミド等と、ポリマーアロイを構成させて使用する例も増えています。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- アクリル樹脂(メタクリル酸メチルエステル、PMMA)は、透明な非晶性の樹脂で、レンズや照明関係に古くから利用されています。 最近では、素材に他の化学成分を加えて改質が行われ、性能が向上されているグレードも各種開発されています。 アクリル樹脂の最大の特長は、光線透過率が優れている点です。樹脂の中では最も優れた性能を有しています。 また、表面硬度も高いので傷に対して抵抗力があります。コーティングにより硬度はさらに改良ができます。 耐候性も比較的良好な部類に属します。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ペットボトルに使用されている透明な飽和ポリエステル樹脂です。 耐薬品性、耐熱性が良好であるので、食品容器類を中心に利用されています。 また疲労強度も良好で、電気特性も優れています。 ガスバリア性は極めて優秀です。 しかし、フェノールやクレゾールには侵食されます。 射出成形やブロー成形で使用されています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)は、荷重たわみ温度が260℃近辺まで耐えられるスーパーエンプラです。 架橋型、半架橋型、直鎖型の種類があります。 はんだの融点よりも荷重たわみ温度が高いので、リフローはんだ用の表面実装対応の電子部品に多用されています。 流動性が良いために、射出成形ではバリが発生しやすい特徴があります。 金型温度は130〜150℃まで上げる必要がありますので、金型は油での温度調節やカートリッジヒータによる保温が必要です。 材料の価格は高価でしたが、量産効果によって最近ではリーズナブルな価格帯へ落ち着いてきています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- ポリカーボネイトは、透明で、強度が高い耐熱樹脂として、広い分野で応用が図られています。 最近では、ABS樹脂等とアロイにしたタイプも、工業用として多用されています。 非晶性であって、光線透過率も良好でありレンズやカバー類には好適な樹脂の一つです。強度的にも優秀で、特に耐衝撃性はプラスチックの中でも上位に位置しています。 ただし、有機溶剤には侵されるので、グリス類や溶剤が塗布されるような場合には注意が必要です。 射出成形では、流動性が悪いので、充填圧力は高めに設定しなければなりません。また金型温度も80℃程度まで上げる必要があります。 具体的な使用例としては、下記のような用途があります。タグ:
- POM樹脂(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)は、破壊強さ等の機械的特性や耐磨耗特性などが優れたエンジニアリングプラスチックです。 POMには、単独重合体(ホモポリマー)と共重合体(コポリマー)があります。 ホモポリマーとコポリマーでは、強度、耐熱性、成形条件などに差があります。 POM樹脂の最大の特長の一つとして、自己潤滑性があります。歯車や軸受けなど、常時、摩擦を受ける部品においては、重宝される機能です。 結晶化度も高いので、強度や耐熱性も良好な特性を示しています。 射出成形では、シリンダー内に長時間滞留させてしまうと熱分解を起こしますので、注意が必要です。 主要な用途は、次のようなものがあります。タグ:
- PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)は、耐熱性が良好で、機械強度の高いバランスのとれた樹脂です。 結晶性であり、有機溶剤や油類にも耐える特徴を有しています。 電気抵抗や誘電率も変化しにくく、電気電子用途にも多用されています。 ただし、加水分解を起こすために、高温の湯中での連続使用では注意が必要です。 ガラス繊維の強化によって、強度は改善されます。 主な用途は次のとおりです。タグ:
- ポリアミドは、ナイロン(商標名)として著名ですが、PA6、PA66、PA46、芳香族ポリアミドなどの種類があります。 特徴としては、摩擦磨耗特性が優れているので、騒音が発生しにくく、安定した摺動が得られます。 また有機溶剤や油に対する性能も優れています。 一方、吸水性や吸湿性が大きいので、成形品の寸法変化が見られます。 ガラス繊維による強化で、耐熱性や強度が改善されます。 主要な使用例は、下記のような事例があります。タグ:
- 射出成形加工を行っている時に、成形機を一次停止したままにしておくと、射出シリンダーの中の溶融プラスチックが熱分解を起こすことがあります。 熱分解が発生すると、下記の現象が発生します。