表面処理と環境保全
環境保全の背景
過去において、電気めっき工場など金属表面処理工場は、シアンや六価クロムによる公害問題を発生して、公害企業として批判を浴び、乏しい資金の中から公害防止施設に大きな投資や、多大なランニングコストを強いられてきました。
湿式表面処理では当然水を使い排水が発生しますので「水質汚濁防止法」が施工され、また、酸・アルカリ・毒物・劇物などを使用しますので、「毒物劇物取締法」が適用され、公共水域に排出する排水には「排水基準」遵守が義務付けらました。下水道に排出する排水には「下水道法」の適用を受け、その地方の「下水道条例」の「排水基準」が適用されます。
また、工程内には有害ガスやミストが発生する部門があれば、これらを除去する浄化装置の設置や運転管理など、濃度測定や自主点検が求められます(労働安全衛生法)。
めっき液や製品の乾燥に用いられるボイラーや、塗装の焼付け乾燥などは「大気汚染防止法」の排気ガス規制を受けます。
また、各自治体には「公害防止条例」があり、水質、大気、騒音、振動などを規制しています。
これら法規制は、成立当初から見ると、年々規制項目は増大し、規制値は益々厳しくなっております。
また近年、これらとは別に、冷媒やスプレー缶に使われているフロンガスによるオゾン層の破壊や、自動車、火力発電等化石燃料の燃焼による二酸化炭素増加による温暖化など、地球環境の悪化が顕著になっているといわれています。
これらに対する対策として、VOC(揮発性有機化合物:有機溶剤など)規制や、省エネルギー対策によるCO2の排出削減、廃棄物による環境汚染を防止するための、カドミウムや鉛や水銀などの有害物質を含まない物品の調達、「グリーン調達」を実施するようになりました。これらは、我が国だけでなく、一部の国を除いて、世界中で行われようとしております。
例えば、ヨーロッパ連合EUでは、電気電子機器に含まれる有害物質の量を規制したRoHS規制(ローズ規制と呼ばれています)や、電気製品などの廃棄物を規制したWEEE規制などを2007年から実施しようとしています。これらは、製品中の有機・無機有害物質の量を規制しています。
また我が国では、工場跡地を住宅にするなどの再開発でしばしば問題となる土壌汚染に、「土壌汚染対策法」が施行され、工場跡地を売却する場合は勿論、自家使用する場合でも、土地の使用目的が変更される場合には、土壌の分析をして、有害物質の有無・濃度を確認し、もし汚染されていれば、土壌を浄化することが求められています。