いろいろな方法で被塗物に塗り付けられた塗料が、塗膜になる乾燥機構は塗料の種類によって異なります。ラッカータイプの塗料であれば、溶剤の乾燥だけで塗膜が形成されますが、橋かけタイプの塗料は、乾燥中に塗膜成分の分子量が増大し高分子化が進みます。通常、塗料の焼き付けとは、この橋かけ形塗料の典型的な乾燥手段であります。
現在の塗膜乾燥装置は大別して熱風対流式、輻射式、電磁波硬化に分けられますが、これらは単独または、複合して使用されています。
(1)熱風対流式
我が国で使用されている塗膜焼付け装置の大半は熱風炉であり、これには直火型と熱交換器を使用する間接型があります。熱風対流式は、炉長が長く、占有面積の多くを必要としますが、熱容量が大きく、形状の複雑な被塗物も均一に硬化させることができるため長年の実績と信用があります。
(2)輻射式
赤外線の輻射熱で加熱し、塗膜を硬化させるものです。輻射熱の波長により、近赤外線(ヒーターの表面温度450℃)、中波赤外線(700℃)、短赤外線(2500℃)に区分できます。【表1】に、硬化・乾燥する被塗物の形状・種類別の有効性を示します。近赤外線は肉厚部分の予熱と昇温時間の短縮に、中赤外線は塗膜内部への浸透加熱と焼き付け時間の短縮、遠赤外線は形状・材質の異なった被塗物の加熱に適するといわれています。
【表1】各種赤外線の形状・種類別の有効性
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(3)電磁波式
電磁波式には、紫外線硬化(UV)式と、電子線(EB)式があります。
UV硬化は、秒単位の短時間乾燥が可能で、熱風式と較べて、作業効率、省エネルギー、環境対応面に優れています。
とくに今後益々求められる環境対応面において、無溶剤型塗料、水性塗料のUV塗料化が進展することが求められております。
EB式は、コスト面で高価になり、これが普及を阻んでおります。
いずれにしても、塗装の最終工程である焼付け工程は、塗膜の物性を左右する重要な工程であると共に、塗装工程中最もエネルギーを消費し、また、VOC(有機溶剤等の有害ガス)を発生する環境汚染度の高い工程でもあります。今後は、これらの問題を解決しながら、より生産的で、高品質・低コスト化が求められております。