(1)法の内容
工場から排出する排水については、法令で定める水質基準を遵守しなければなりませんが、工場敷地の土壌の管理も重要です。敷地内に有害物質が漏洩したり、しみ込んだりして、土壌や地下水を汚染したりすることがないよう対策をしておくことが必要です。
過去に有害物質を使用していた工場が移転したり、廃業した跡地を、公園や住宅などに使用した場合に、土壌が重金属やトリクロロエチレンなどの有機化合物で汚染されており、住民に被害を及ぼす可能性が発生しました。
その対策として、土壌汚染対策法が制定され、平成15年2月15日から施工されました。この法律の趣旨は、表面処理など有害物質を使用した工場が、その事業を廃業して売却したり、建物などを建て直す場合には、汚染の有無を調査し、もし汚染されていれば浄化しなさいというものです。
この法律がいう有害物質とは、次のようなものです。
■第1種特定有害物質
揮発性有機化合物(トリクロロエチレンなど) 11種類
■第2種特定有害物質
鉛およびその化合物などの重金属類 9種類
■第3種特定有害物質
シマジンなどの農薬 5種類
(2)重金属の基準
土壌汚染の有無を判定する重金属の基準には、土壌溶出量と土壌含有量という二つの基準があります。これらを、【表1】に示します。
【表1】土壌溶出量と含有量基準
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(1)土壌溶出量基準
土壌溶出量とは、有害な重金属が、雨水などによって地下水に溶け込み、その地下水を人が飲むことで健康をそこなう可能性を検討して設定されました。一定重量の土壌中の有害物質を純水に溶出して濃度を測定します。
(2)土壌含有量基準
土壌含有量基準は、重金属類を含有する土壌に高い濃度で存在する有害物質が風などで飛散し、その土壌の微粉を人が誤って飲み込むことや、肌に触れることで健康を損なう可能性を検討して設定されました。