金型図面とは、一般に金型の全体構造を検討したり、金型部品を設計し製作するために、紙またはディスプレイ上に2次元的または3次元的に表現した図面のことです。
金型図面は、部品の加工情報や形状、寸法公差、材質、熱処理などの生産技術情報が盛り込まれている重要な技術情報になります。
したがいまして、金型図面は企業秘密が盛り込まれている場合もあり、その取り扱いは慎重に行う必要があります。
金型図面の機密保持に関しては、産業に関する法令で保護される場合があり、その代表的なものは不正競争防止法です。また、一部の場合には著作権法が適用される場合があります。
この中で、「金型図面が著作権法で保護される場合」について解説します。
著作権法の目的は、著作物等の権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与することを目的としています。
したがって、著作権法の適用を受けるためには、「著作物」であることが必要になります。著作物は、下記のように定義されています。
第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一著作物 思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
(以下略)
したがいまして、金型図面が著作物に該当するためには、「思想または感情を創作的に表現したもの」であって、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要です。
金型図面は、「思想または感情を創作的に表現したもの」には相当する場合が多いと考えられます。
しかし、金型図面は、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に相当するかどうかはケースバイケースになると考えられます。一般の製作用図面である場合には「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」には相当しないと考えられます。したがいまして一般の製作用図面は著作物に相当しませんので、著作権法による保護は受けられないということになります。
ただし、学会論文の一部として掲載された図面などは学術の範囲に属するものに相当することがありますので、このような場合には著作物として保護の対象になり得ます。
また、著作権法の他の規定では下記の条文があります。
第十条(著作物の例示)
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
(中略)
六 地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
(以下略)
この条文での著作物の例示でも「学術的な性質を有する図面」は著作物に相当すると解されていますので、金型図面は学術的な性質が必要であることがここでも明記されています。
結論として、金型図面が著作権法の保護を受けられる場合は、「学術的な性質を有する図面」であることが必要です。一般の製作図面は、著作権法の保護は受けられないと考えれるのが相当です。
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- 参考文献:『著作権法逐条講義(四訂版)』(加戸守行 (社)著作権情報センター)