プラスチック成形金型では、プラスチック素材や金型自身を保温するために保温材料を 副資材として使用することがあります。金型の熱移動を防止したり、外気との熱移動を阻止するためには、金属以外の素材を用いることがあります。
金型の技術者は、金属特に鋼には深い知識を持っていますが、非金属材料については知識が薄い場合があります。今回は、保温素材についての基礎知識を解説します。
保温材料としては、次の3種類の系統があります。
- (1)
- 有機質(炭素を含むもの)
- (2)
- 無機質(炭素を含まないもの)
- (3)
- 金属質
(1)有機質保温材料
パルプ、木綿、羊毛、羽毛などの天然素材がこれらに含まれます。これらの素材の間に空気層を作ることで保温効果が高まります。保温効率を高くするためには水分を低下させることが必要です。
また、コルク材が挙げられます。これは天然の木材が原材料になりますが、細胞内に空気を含んでおり、断熱効果が高いのが特徴です。コルクにのりを加えて圧縮し、蒸気加熱処理をした蒸気コルク、加熱して分泌樹液で固化させた炭化コルクがあります。
これらの素材は、高温では変質したり、燃焼したりしますので高すぎる温度では工夫して利用しなければなりません。
(2)無機質保温材料
鉱物繊維として石綿(アスベスト)が保温材料として多用されてきましたが、人体に対して発ガン性が知見されましたので工業用途には使用されなくなりました。
他の種類の鉱物繊維としては、安山岩・玄武岩を高温炉で溶解して急冷して繊維化したロックウール、溶鉱炉のスラグを急冷して繊維化したスラグウール、ガラス繊維をもちいたグラスウールがあります。
これらの無機質保温材料は、耐熱性が優れており、射出成形機のシリンダー保温にも採用されています。電気も通しにくい特性を持っています。
(3)水練り保温材
炭酸マグネシウム粉末、珪藻土は、粉末状の保温材料になります。ボイラー、化学装置、蒸気管の保温に利用されています。炭酸マグネシウムは300℃、珪藻土は500℃程度まで耐熱性があります。
珪藻土は、これを焼成して耐火煉瓦として使用されています。この状態であれば800~900℃程度にまで耐えられます。
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- 参考文献:門間改三,大学基礎機械材料,実教出版(株)