プラスチック成形金型にセメントやコンクリート使用するというアイデアは突飛すぎるかとも思われますが、既にいくつかの事例では型板等の一部として使用されています。特にコンクリートは、圧縮強さが高く、橋梁やビルには欠かせない素材となっています。圧縮強度が高い点を活用すれば、型板にも応用できるという訳です。しかし、あらゆる金型に応用が利く訳ではありません。その適用にはしっかりとしたコンセプトデザインが必要です。
さて、普段私たちが接する機会が少ないセメントやコンクリートについて基礎を理解したいと思います。
セメント(cement)とは、粘土質の原料(SiO2, Al2O3, Fe2O3など)と石灰質原(CaOなど)を微粉末として、これらを混ぜて1,400~1,500℃の高温で焼き、クリンカー(clinker)という物質を作ります。さらに、これに石膏を3%程度加え、微粉化したもののことです。これらはポルトランドセメント(Portland cement)と呼ばれています。
ポルトランドセメントは、下記の4種類の鉱物組成となっています。
(1) | 珪酸三カルシウム | 3CaO・SiO2 |
(2) | 珪酸二カルシウム | 2CaO・SiO2 |
(3) | アルミン酸三カルシウム | 3CaO・Al2O3 |
(4) | アルミン酸鉄四カルシウム | 4CaO・Al2O3・Fe2O3 |
ここで、ポルトランドセメントに水(H2O)を加えると、驚くべき化学変化が起きます。この現象を水和と呼んでいます。水和により成分は、凝固して流動性を失って固化し、さらに硬度が上昇していきます。(1)~(4)までの成分は、それぞれ水和する時間に差があり、これらの成分の配合比率で固まる時間や硬さを調整することができます。
さらに、セメントに砂、砂利(骨材)を加えたものをコンクリート(concrete)と呼びます。コンクリートは、骨材に用いる砂利や鉄筋によってその強度を高くすることができます。コンクリートの固化には数日の時間がかかるのが一般的で、固化するときの気温や湿度によって強度は大きく変化します。固化するまでの環境維持が大きな技術的ポイントであると言えます。
金型に使用された例としては、下記のような対象があります。
- (1)
- 可動側型板
- (2)
- 固定側型板
- (3)
- サポートブロック
- (4)
- キャビティの心材
- ※
- 参考文献:門間改三,大学基礎機械材料,実教出版(株)