「ねじ」は機械装置類の製作には絶対に欠かせない、最も普及している機械部品です。したがって、JIS、ISO等の一般規格として形状・サイズ、強度(強度区分)別に標準化されています。しかし、LCA(ローコストオートメーション)設計の段階では従来の経験に頼る「カンピュータ」で、組立の時点では在庫の部品棚から有り合わせのボルトで間に合わせるなど、手抜き状態が見られます。
講座ではLCA設計における「ねじ」・「ボルト/ナット」の勘所と、それを支えるねじの基礎理論を解説します。
(1)LCA設計段階でのねじ設計トラブル
LCA自動機・治具類は、部品のほとんどをねじ(ボルト/ナットを含む)で締結して出来ているといえます。したがって、「ねじ」設計は次の項目に影響を与えます。
影響項目 | 設計手段の例 | |
---|---|---|
LCA設計における「ねじ」設計の影響項目 | 部品加工費 | 標準化、加工しやすい配置設計 |
組立加工費 | 組立容易性、標準化 | |
装置外観のセンス | 洗練されたムダのない外観 | |
稼働中の信頼性 | 強度、剛性、締結信頼性、経時変化の信頼性 | |
機能保証 | 精度保証と維持 | |
メンテナンス性 | 解体・修理しやすいねじ配置/方向 |
したがって、ムダが無く機能性に優れる安価なLCA設計には「ねじ設計」は無視できません。
(2)LCA製造段階と導入後のねじトラブル
LCA製造段階と導入後のねじトラブルは、次の2つに分類できます。
(a)LCA組付け締結時に生じるトラブル・・・LCA設計段階にミスがあるもの
■例
- 組付け部品のボルトザグリ穴やめねじ深さに合うボルトの在庫がない
- めねじ位置とボルト位置がずれている
- 組付け時にねじ山が破損
- 被締結体が締付け力で変形
(b)締結後の長時間経過後に生じるトラブル・・・LCA設計段階での強度検討不足によるミス
■例
- ねじのゆるみとその結果の部品の位置ずれ、設備破損
- ボルトの破壊
a)、b)ともに、LCA設計段階での設計者の不手際が主要因となります。