機器の設計において、部品の安全性は重要な問題となります。しかし、部品全てにつき評価、試験をすることは大変な手間を必要とします。そこで、部品の安全性を確認する一つに安全規格があります。以下では「FA用エレクトロニクスカタログ」で取り扱う部品が認定を受けている代表的な安全規格の電気用品安全法、UL規格、CSA規格、EN規格についてご説明します。併せてEU域内での製品の流通について関係するCEマーキングについてご説明いたします。
国別安全規格(代表例)
1.電気用品安全法(日本)
制定の目的は粗悪な電気用品による危険および障害の発生を防止することにあります。型式の認可、電気用品の製造業者の登録、違法な電気用品の販売、使用の制限および禁止を規定しています。電気用品取締法で規制される製品は、一般に家庭や事務所などで使用される電気用品で、危険性などによって、甲種電気用品と乙種電気用品に区分されます。1995年7月1日に電気用品取締法が一部改正され、多くの品目が甲種から乙種に移行され、電気用品取締法認定マークの表示については甲種のみとなり乙種については表示の義務が廃止されました。また、認証試験は電気安全環境研究所(JET)などで行われるようになりました。 電気用品安全法は、平成11年8月に「通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律」(法律第121号)が公布され、電気用品取締法(以下「電取法」)が改正されて電気用品安全法(以下「電安法」)となり、平成13年4月1日より施行されました。電安法の移行にともない予告なくマーク商品から マーク商品へ順次、切り替っております。あらかじめご了承ください。 |
2.UL規格(アメリカ合衆国)
UL(Underwriters Laboratories Inc.)はアメリカ合衆国火災保険事業者組合によって設立された非営利検査機関です。その目的は、火災その他の事故から人命、財産を保護するために機械、器具、材料の安全性を確保することにあります。そのためULでは機械、器具、材料について種々の試験、研究を行い、その結果としてそれらに関する規格(UL規格)を定めています。その範囲は電子応用機器、電動応用機器、電子部品などの一般用途のものに限定されていますが、UL規格に合致した製品を作り、ULの定める安全検査に合格し、ULの登録ブックに掲載されなければ、アメリカ合衆国のほとんどの州において製品の販売ができません。これは州法で定められている以外にも、たとえばUL認定品以外のものが原因で火災などが起きた場合には、火災保険業者はその責任を負わないなどの規定があるため、アメリカの消費者が自然にUL認定品を求めてくるということもあるようです。したがって、製品をアメリカへ輸出・販売する際は、ULの認定を受けることが必要条件となってくる場合がほとんどです。 またULはカナダのカナダ規格審議会(SCC)から認証機関及び試験機関として認定を受けており、カナダ全州から公認されています。そのためULにおいてもカナダの安全規格に従って試験を受けることが可能となり、適合していることが認められればc-ULマークの表示をすることができ、カナダでの使用・販売が認められます。 |
3.CSA規格(カナダ)
CSA(Canadian Standards Association)は、カナダ政府の諮問によって設立された民間の非営利検査機関です。カナダでは、法律により、火災その他の事故から人命、財産を保護するために、電気機器、電気部品、ガス・石油燃料機器、安全器具などについて、その安全性がCSAに認められたもの以外は、使用、販売が禁止されています。CSAはこれらの部品の安全性の確認のための検査・要求事項として規格(CSA規格)を定めています。 またCSAはアメリカ職業安全衛生管理局(OSHA)からアメリカ国家試験所(NRTL)として認証を受けており、アメリカの安全規格に従って試験を受けることが可能となり、適合していることが認められればCSAマークにNRTLが付加されたマークの表示をすることができ、アメリカでの使用・販売が認められます。 |
4.EN規格(EU加盟国)
欧州規格(European Standard)の略称。正式な手順を経てCEN/CENELECの加盟国の投票により承認され、制定された統一規格。EC12カ国EFTA加盟6カ国に適用され、各国は国家規格としてEN規格を採用する義務を有します。またEN規格と合致しない国家規格は撤回しなくてはなりません。 その統一された規格は欧州統一規格(Harmonized Standard)と呼ばれ、規格番号の頭にENとつきます。EU域内に製品を輸出する場合、このEN規格が設計・製造上のよりどころとなります。(EN規格としてまだ制定されていないものはIEC規格やVDE規格が適用されます。) TUV Rheinland、VDE(ドイツ)、DEMKO(デンマーク)などは民間検査機関が認証機関となっており、適合していることが認められればそれぞれの安全マークを表示することができます。 |
CEマーキングについて
「CEマーキング」は、製品が安全基準を満たすことを証明し、EU域内を自由に流通することを保証するものです。製造者はその機器に関係したEC指令に適合している(安全である)ことを証明するCEマーキングが義務化されていますが、CEマーキングへの適合の基本は、製造者自らが対応し自らが判断を下す「自己適合」の世界であることを配慮する必要があります。CEマーキングは、ULやCSA等とは異なり、製造者が自ら添付するものなので、CEマークの認可を受けるということではありません。(機器の危険性の度合により、公認機関による型式試験が要求され、その型式説明書を取得後、自己宣言をする場合もあります。)このEC指令とは、EC委員会が各加盟国に指令の要求内容を各国の国内法に取り組むように要求するもので、基本的要求事項は健康と安全性に関する規制にあります。以下は主なEC指令の適用範囲と強制時期です。
1.機械指令 |
可動部により損傷を与える可能性のある機器に適用されます。一般に工作機械など産業用機械が幅広く適用されます(1995年1月1日強制) |
2.EMC指令 |
電磁波妨害を与える可能性(EMI)および、電磁波妨害の影響を受ける可能性(EMS)のある機器に適用されます(1996年1月1日強制) |
3.低電圧指令 |
交流50~1000V、直流75~1500Vで使用される機器に適用されます(1997年1月1日強制) |
上記のEC指令の内容は、あくまでも一般的な基準・機械が最低限遵守しなければならない事項に限定した叙述となっているので、個々の技術的な詳細、特に電気(電力供給・電気制御)については別個の欧州規格を考慮する必要があります。
EC統合に伴い欧州規格の安全規格はEN規格(欧州規格)として統一されつつあり、各分野での新しいEN規格の制定・改定が進められていますが、適合するEN規格がない場合には、国際規格から優先的に使用をするようです。しかし、EN規格以外を使用する場合には、公認機関(欧州に設立された機関に限定されています)が、その妥当性について判断する責任機関となっています。
※EN規格と国際規格との関係
EN規格は欧州における地域規格として位置づけられていて、国際規格であるCISPR(国際無線障害特別委員会)やIEC(国際電気標準化会議)を基にほとんど同じ内容に整合されています。
CEマーキングへの指針
EC指令においては、機器を構成する部品すべてに対して、必ずしも規格認定品は要求していないようです。一般的にCEマークは完成品に貼付されます。すなわち、CEマーキングは消費者または最終使用者が使う段階のものに要求されていますので、これから判断すると、部品はCEマーキングの対象品ではないようです。しかし、部品にCEマーキングが要求されているかどうかは、いろいろ微妙な問題を含んでいて、欧州の中でも論議されており、運用にもばらつきがあるようです。もちろん、製品の構成部品としてCEマークや規格認定された部品を使用した場合のほうが、部品レベルでの安全性評価の簡略化や、機器を公認機関に規格申請した場合の申請書類、試験の簡略化においては容易になると考えられますが、詳細については下記の団体等に直接お問い合わせください。
当カタログ内のCE対応マークについて
「配線接続部品カタログ」においては、商品がEN規格に合致していることを基準としてCE対応マークを記しています。 |
- CEマーキングに関する主な問い合わせ先
(財)日本規格協会(JSA) 東京都港区赤坂4-1-24 TEL.03-3583-8004
日本機械輸出組合(JMC) 東京都港区芝公園3-5-8(機械振興会館4階) TEL.03-3431-9507 - コンサルタント及び試験機関
(財)日本品質保証機構(JQA) 東京都港区赤坂1-9-15(日本自動車会館2号館) TEL.03-3583-9001
(財)電気安全環境研究所(JET) 東京都渋谷区代々木5-14-12 TEL.03-3466-9818
・PSEマーク( または〈PS〉E)未取得の海外向け電源コードセットを日本国内の最終消費者に販売することは違法となります。 |