続いて、代表的な真空ポンプについてご紹介しましょう。
(3)ソープションポンプ
冷蔵庫の脱臭剤には活性炭が使われますが、これは活性炭が常温でも悪臭を吸着するからです。しかし空気は吸着してくれません。吸着剤で真空系の空気を吸着するには、液体窒素などで-196℃に冷却してやると吸着排気してしまうことが分かっています。
1グラム当り600m2というような、非常に大きな表面積をもった吸着剤を使って液体窒素で冷却すれば、大量の気体を吸着し、真空ポンプとして使用できるのです。使用後、暖めると吸着した空気はほとんど排出し、何回でもポンプとして使用できます。
このポンプは、全く油を使用していないところに意味があり、スパッターイオンポンプと組み合わせると、完全ドライ系システムを構築することができます。
ソープションポンプの外観を【写真1】に示します。ステンレス製容器の中に多孔質物質が入っており、最外殻の魔法瓶に液体窒素を入れて冷却します。
(4)スパッターイオンポンプ
蛍光灯を長く使っていると、両端が黒ずんで暗くなってきます。これは蛍光灯のフィラメント電極成分がスパッターされてガラス管の内面に付着したためです。このスパッターされた電極の物質は、壁に付着するときに周囲の気体を少しずつ吸着します。その結果放電がおきにくくなり、蛍光灯は暗くなります。
この現象を利用して、蛍光灯よりもっと低い圧力でイオンを作り、このイオンによって活性な物質をスパッターさせ、気体を吸着しようとしたのがスパッターイオンポンプです。
このポンプは通常、円筒状の陽極の両端に陰極(Ti製など)があり、両者には高電圧が印加され、かつ、強い磁場のマグネトロン放電の中にあります。マグネトロン放電で発生した電子は、陽極室のなかで放電によってイオンをつくります。イオンは陰極に突入してTiをスパッターします。これは陽極などに付着します。このとき気体を吸着します。この様子を【図1】に示します。