ばねに吸収蓄積されるエネルギについて解説します。
(a)線形特性のばねの吸収蓄積エネルギ
- ばねに荷重をかけると、フックの法則に応じたたわみ(変形)が生じます(【図1】)。この状態から素早く荷重を開放すると、ばねは元の状態に振動を伴って戻ります。したがって、荷重がかかった状態では、ばねにはたわみによるエネルギが蓄積されていることになります。
- このばねに蓄積されているエネルギ量は、次式で表されます。
ばねに蓄積されたエネルギ U = k ・δ2 / 2 k:ばね定数 δ:たわみ量
この式は、【図1】の三角形OABの面積に相当します。
- 【図1】の三角形OABの面積の大きさが、ばねのエネルギ蓄積能力だとすると、次のことが言えます。
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- 同じばねによるエネルギ蓄積能力では、たわみ量を大きくすればエネルギ蓄積量も大きくできる。
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- ことなるばねの場合、ばね定数が小さくても、たわみ量の大きさで相当量のエネルギ蓄積能力が得られる。
この事例として、精密機器用衝撃吸収ダンパ、メカロック(【図2】)などがあります。
(b)非線形特性のばねの吸収蓄積エネルギ
- ばねの構造によって、ばねのたわみ時のエネルギを吸収蓄積させるものがあります。
- 輪ばね(【図3】)は、円錐面をもつ内輪と外輪とを交互に積み重ねた構造をもつばねで、軸方向に圧縮荷重が作用すると、外輪と内輪が伸び縮みを起こし、そのときに内輪と外輪の円錐面で摩擦力が生じます。この摩擦力によりたわみによるエネルギの一部が吸収されるため、緩衝装置などに応用されます(【図4】参照)。
- 【図4】の場合、1回のたわみの開放により吸収されるエネルギは、【図4】の荷重-たわみ曲線で囲まれた面積分となります。