引張りコイルばねは、圧縮コイルばねのように、非線形特性を持たせることが出来ません。しかし、初張力を造りこむことができます。
(1)初張力のある引張りコイルばねについて
- 引張りコイルばねでは、無荷重の状態でもコイル同士が密着する方向の力:初張力をもたせることができる。
- この初張力は、密着状態に成形するときに、コイル同士が密着する方向に作用する素線のねじれを生じさせて得られる。
- 冷間成形で密着巻き加工によりばねを成形する場合は、多少なりとも初張力がついてしまうが、初張力を積極的に形成させたばねを初張力をもつばねという。
- 初張力を持たないばねと持つばねの荷重—たわみ特性は次のようになる。(【図1】)
- 【図1】の引張りばねの荷重-たわみの関係式は【式A】で表され、初張力をもつ引張りばねの荷重-たわみの関係式は【式B】で表される。
【式A】
荷重P(N)= ばね定数 k(N/mm) x たわみ量 δ(mm)【式B】
荷重P(N)= 初張力Pi(N)+ ばね定数 k(N/mm)x たわみ量 δ(mm) - 初張力Piは、次式で算出される。
(2)初張力を持つばねの長所・短所
初張力を持つばねの主な長所・短所は次表となる。
長所 | 短所 |
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(3)引張りコイルばねの各種形状
引張りコイルばねの形状は、ばね特性面で非線形性を持たないこともあり、円筒形と両絞り形の2種類がほとんどです。この2種類の外形形状に、色々な両端部のフック形状を持つものがあります。
■一体式両端フック形状
半丸フック、丸フック、逆丸フック、側面丸フック、角フック、Uフック、Vフック、他
■別体式フック形状
絞り丸フック、栓形、板形