ボルトで2つの部品が締結された状態は、ボルトが伸び被締結部材は圧縮変形を生じており、この状態で引張力と圧縮力がつりあっています。この2つの部品間で締結力がつりあった状態に、外からの衝撃力や振動など何らかの外力が作用すると、ボルトにゆるみが生じる場合があります。ねじのゆるみは、装置破損、不良品の生産、事故などに繋がる重大欠陥の要因となります。ここでは、典型的なねじのゆるみのメカニズムと、代表的なゆるみ防止策について解説します。
(1)ねじのゆるみ
- 2部品を締結したボルトがゆるみを生じるのは、次のa)、b)が同時に生じる場合である。(【図1】参照)
a)締結部に2部品の接触面1〜4があり、被締結部材に外力が加えられ、
b)ナットの接触部1のおねじとめねじ間にすきまがあり、相対すべりが生じた場合 - ねじのゆるみに影響を与える外力は、【図1】の4種類の力<ア)〜エ)>が挙げられる。これらの外力がボルトに「戻り回転運動」を及ぼしゆるみを生じさせる。(【表1】の下の欄参照)
ア)軸方向外力 イ)軸直角方向外力 ウ)軸回りモーメント エ)曲げモーメント - 上記以外に、温度変化(膨張・収縮作用)、挿入材の機械的特性、摩耗などによる「戻り回転運動」を伴わないゆるみ現象もある。(【表1】の上の欄参照)
- 【表1】に「ねじのゆるみの基本パターン」を整理しました。
【表1】ねじのゆるみの基本パターン戻り回転によらないゆるみ 1. 初期ゆるみ
・締結接合面の表面凹凸が外力でへたりゆるみが生じる等2. 陥没ゆるみ
・座面部の塑性変形によるもの3. 摩耗によるゆるみ
・振動や長時間運転による接合面の微小摩耗ですき間が生じる等4. 挿入材のへたり・破損などによるゆるみ 5. 過大外力によるゆるみ 6. 熱変形、リラクゼーション(応力弛緩)によるゆるみ
・異種材料の締結時に特に留意が必要戻り回転によるゆるみ
(外部から力が働いた場合)7. 軸回り方向の繰り返し外力作用による 8. 軸直角方向の繰り返し外力作用による(【図2】) 9. 軸方向繰り返し外力作用による
(2)ねじの代表的なゆるみ止め部品
ねじの代表的なゆるみ防止法と使用されるゆるみ止め部品を、次表にまとめました。
【表2】ねじのゆるみ防止法とゆるみ止め部品
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