プレス金型部品
- シャンクは、上型を、プレス機械のスライドに取り付けるための部品として使われます。 この部品は打ち抜き型に限ったものではなく、各金型に共通するものです。 基本的な内容なので、最初に紹介します。 シャンクとパンチホルダの関係を【図1】に示します。パンチホルダがベースとなる部品で、シャンクはその上に取り付けられます。 シャンクは柱状をした部品で、比較的小さな金型の上型を、プレス機械のスライドに取り付けるために使用します。シャンクの径は25、32、38及び50mmが標準です。寸法はインチサイズからきています。古いプレス機械では25mmではなく25.4mmとなっているものもあるので注意が必要です。そして、長さは50〜65mm位が使われています。 材質はSS400またはS50C相当か、FC250程度のものが使われています。タグ:
- 打ち抜き(ブランク抜き)加工では、ブランク形状とブランクパンチ形状は同じ形にします。そのときにブランクパンチ寸法は、ブランク寸法よりクリアランス分小さくします。タグ:
- (1)金型の概要 打ち抜き型(ブランク抜き型)は【図1】に示すように輪郭形状を作り出すものです。そのままで製品の輪郭となるものもあれば、曲げや絞りなどの成形製品の展開形状である場合もあります。プレス加工の基本と言えるひとつです。 【図2】は標準的なブランク抜き型の構造を示しています。固定ストリッパ構造の金型です。 金型は、上型(シャンク、パンチホルダ、パンチプレート及びパンチで構成されています)と、下型(ストリッパ、ダイ及びダイホルダで構成されています)に分かれます。タグ:
- 円筒絞りに要する加工力(P)は、円形ブランクをパンチがダイに押し込んでゆく力です。加工力に関係する主なものは、ブランク材の変形抵抗です。その他に、ブランク材と金型との摩擦、しわ押さえ力(しわ押さえ力に関しては、連載のこちらを参照して下さい)といったものが、関連が大きなものといえます。これらの合計が必要な絞り加工力です。 円筒絞りの加工力は、次の計算式がよく使われています。【図1】を参照して下さい。 P=K・π・d・t・Ts(Kgf)タグ:
- ここで示す曲げの加工力は、自由曲げの加工力です。曲げ加工では、形状を安定させるために下死点で底突きすることをよく行いますが、底突き加工は突き量によって非常に大きな力を必要とします。その大きさは、自由曲げ加工力の5〜10倍くらいになると考えられます。 (1)V曲げの加工力(【図1】参照) V曲げの加工力は次の式で表されます。タグ:
- (1)側方力(F) 側方力とは、【図1】に示すように、加工力に対して直角な方向に生じる力です。残り幅が少ない材料では側方力で押され、変形したりします。 パンチへの影響では横に押されることで、クリアランスが変化して抜け状態を変化させたりします。 ダイでは、切れ刃部が弱いと破損することもあります。 側方力は抜きの行程に比例して増加します。抜きクリアランスの大きさによっても変化します。側方力は次のように表されます。タグ:
- プレス抜き加工(せん断加工)に必要な加工力を知ることは、プレス機械の選定や金型設計のためにも欠かせません。 せん断加工力(P)は、次の式で求められます。 ■式1 P=L・t・S P:せん断加工力(Kgf) L:加工周長(mm) t:板厚(mm) S:せん断抵抗(Kgf/mm2) しかし、せん断抵抗(S)を知ることが難しいときには、材料の引張強さ(Ts)の80%として代用することが行われています。式が次のように変わります。タグ:
- 【図1】および【図2】は鋳造一体構造の金型です。鋳造構造は大きな形状を1体で作れるので、鋼板で製作するのに比べ容易に作ることができます。タグ:
- 中、小形の金型の主要部品に使われる金型材質について説明します。 金型の構造にはいくつかの種類がありますが、よく使われている可動ストリッパ構造を例に説明します。【図1】に示した金型のプレート構成は、可動ストリッパ構造の最大構成を示しています。タグ:
- プレス金型に使われている超硬合金は、タングステン・カーバイド(WC)とコバルト(Co)との合金です。材料の主体はWCで、Coはバインダー(接着剤)の役割をしています。Co量は5〜25%範囲でです。 超硬合金はCo量が増えると硬度は低くなります。 超硬工具協会の規格019で、V10、V20、V30、V40、V50、V60という規格があります。 V10では、Coは5%位、V30では、12%位、V60で、25%位が目安となります。 硬さはV10で89HRA以上、V30で87HRA以上、V60で78HRA以上です。ちなみに85HRAは、67HRCに換算されます。 硬さはCo量の他に、WCの粒子の大きさも関係します。粒子が小さい方が硬さが増します。普通の超硬合金の粒子は2.5〜1.5μm位です。超微粒子と呼ばれるものでは、0.7〜0.5μm位です。 超微粒子材になると、耐摩耗性と脆さの両方の性質を高めることができます。 超硬合金は硬いが脆い材料です。使う用途によって硬さと脆さのバランスを考えて材質を設定します。プレス金型では、V30、V40あたりが基準となります。タグ:
- 今回は、鋼材以外の材料を含めて紹介します。 プリハードン鋼 フレームハード鋼 アルミニウム青銅 鋳鉄 プリハードン鋼 プラスチック用の金型材料として開発された材料を、プレス用の金型に転用されたものです。JISには無く、メーカーブランドのものが使用されています。切削加工ができ、硬度がある程度ある材料です。40HRC程度に調質されているもので、析出硬化系(【※】参照)のものが使われています。 プリハードン鋼は、少量生産の抜き型や曲げ型のパンチ・ダイに使われることが多いです。量産型では、パンチプレートやバッキングプレートなどに使われます。切削加工ができて熱処理せずそのまま使用できる便利さが気に入られている材料です。タグ:
- 高速度工具鋼は「ハイス」と略して呼ばれます。材料記号はSKHです。 ハイスは、タングステン(W)系とモリブデン(Mo)系があります。 JISでは、JISG4403にまとめられています。 タングステン系には、おおよそ18%前後のタングステンが添加されています。モリブデンは含んでいません。種類としては、SKH2、SKH3、SKH4及びSKH10があります。このシリーズは耐摩耗性が大きいので、切削工具等に多く使われています。 モリブデン系は、おおよそ5%前後のモリブデンと、6%前後のタングステンが添加されています。種類としてはSKH51〜SKH59までの9種類があります。 このシリーズはじん性が高いことから、衝撃を受けるプレス金型に適しています。よく使われているのはSKH51(旧名SKH9)です。 ハイス材は、焼き入れ硬度が63HRC以上入ります。ダイス鋼のSKD11は焼き入れ硬度が62HRC程度です。ダイス鋼で、耐摩耗性やじん性に不満がある小径のパンチ等に、ハイスは使われることが多いです。タグ:
- 金型を構成する材料で、主にパンチ、ダイ、ストリッパおよびバッキングプレートなどの主要部分に使われる材料です。 (1)工具用炭素鋼(SK材) SK材の炭素含有量は0.6〜1.5%です。SK材は1種から7種まであります。SK1は1.3〜1.5%の炭素量、SK7は0.6〜0.7の炭素量です。SK1→SK7に向かって炭素量は減少していきます。ちなみに、炭素量が0.6%未満になると機械構造用(SC材)となります。 プレス金型では、SK3とSK5が多く使われています。 プレス金型での使い方としては、少量生産用のパンチ、ダイに使われます。 SK材の硬さは熱に弱いので、十分な焼き入れをしても、プレス抜き加工のように加工熱の伴うものでは長い寿命を期待できません。そのため、パンチやダイとして使うことより、バッキングプレート等の補助的な部分へ使われることが多い材料です。 (2)合金工具鋼(SKS、SKD) 合金工具鋼はSK材にタングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびバナジウム(V)などの特殊元素を添加して特性を改善したものです。タグ:
- 金型を構成する材料で、主に構造を作る材料です。 (1)一般構造用圧延鋼材(SS材) 生材としては最も多く金型に使用されている材料です。多く使われている種類はSS400です。一般的にはSS材と呼ばれています。 SS400の数字は引張強さを表しています。SS400は400〜510N/mm2の強さを持っています。 この材料は粘りけのある軟らかい材料なので、ドリルなどによる穴加工では切削チップ(切り粉)がつながって長い螺旋状になり、処理しにくいとの意見もあります。タグ:
- プレス加工では、パンチ等の部品には繰り返しの荷重が働きます。 繰り返し荷重は疲労(疲れと呼ぶこともあります)破壊の原因となります。疲労破壊=疲労強度と結びつけることができます。 疲労強度に関係する要因は、次のものがあります。 調質された硬さ(45HRC程度を確保されたもの)。 シャープな角をなくす(Rをつける)。 表面は平滑にする。 (1)引張強さとの関係 疲労強度は材料の引張強さにほぼ比例します。焼き入れ材と生材とでは違いがあり、疲労強度は、生材では引張強さの50%程度、焼き入れ材では45%程度が目安です。この内容はあまり、材質には関係がありません。 (2)硬さとの関係 材料の硬さについても硬い方が疲労強度は高くなります。45HRC程度の調質された硬さが、疲労強度が最も高くなります。 (3)表面状態 引張強さ、硬さが適当であっても、パンチ等部品の表面状態が悪ければ疲労強度は低下します。できるだけ面の状態はきれいに仕上げるとよいです。タグ:
- プレス金型に用いるパンチ、ダイ(工具)には加工力が働きます。その加工力は衝撃に近いものです。型材質と衝撃について考えてみます。 (1)靱(じん)性 工具には、その形状をいつまでも維持し、多くの生産ができることを期待します。それは「工具が摩耗せず、初期形状を長く維持すること」です。摩耗は工具の硬さが大きな役割を担っています。 材料の性質を考えると、硬い:摩耗しにくいイメージと、脆い(もろい)、これを脆性(ぜいせい)と呼びまが、力が加わると変形せず、すぐに砕けるようなイメージがあります。 軟らかい:摩耗しやすい、延びやすい(延性)というイメージがあります。工具にとっては好ましくない性質です。 もうひとつ、力に対する変形や破壊のしにくさという性質があります。少し分かりにくいイメージですが、「粘い」と表現されるものです。これを「靱(じん)性」と呼びます。JISの用語解説では、じん性を「粘り強くて、衝撃破壊を起こしにくいかどうかの程度」と説明しています。 工具鋼の耐衝撃性では、材料の持つじん性がキーワードになります。タグ:
- 金型用の鋼材には、いろいろな性質が求められます。まず、その内容を理解しておきましょう。 (1)耐摩耗性 JISでは、摩耗を「相対運動する金属面の機械的引っかき、金属的粘着などが総合されて、その面が損耗する現象」と表現しています。耐摩耗性とは、このような現象が起きにくい性質といえます。 (2)耐摩耗性に影響する要因 (1)硬さの影響 耐摩耗性に影響を与える大きな要因に「硬さ」があります。一般に、硬いほど耐摩耗性は大きくなります。ロックウエル硬さで40HRCあたりを境に大きく変化しています。40HRC以下では摩耗量は大きく、以上では摩耗が少ないのです。しかし、焼き入れして硬ければよいというものではなく、硬さと同時に鋼材の内部に残留応力が少ない方がよいのです。焼き入れ、焼き戻しをセットで行うのはこのためです。タグ:
- ハット曲げのような形状を1工程で加工すると、加工後の製品が金型についてしまって取れなくなることがあります。そのために2工程で加工することが多いのですが、少し工夫すると1工程化が可能な場合があります。 【図1】〜【図3】は、ハット曲げの高さ方向の時間差を工夫した金型を示しています。 【図1】で構造を説明すると、ブランクの乗った1曲げダイがあり、その内側に2工程目の2曲げダイが配置されています。パンチは、1曲げ、2曲げに対応した複合パンチになっています。パンチ内にはノックアウトがセットされています。加工後にパンチに付いた製品は、このノックアウトで製品を排出します。 【図2】は、1曲げ(両端のL曲げ)が終わったところです。さらに下降して、2曲げダイまで下げ、2曲げ加工が完了した状態を示しているものが【図3】です。タグ:
- 【図1】に示すような曲げ角度が小さい形状の製品では、通常のブランク加工→曲げ加工の2工程とせずに、1工程でブランク加工と同時に曲げを行うことができます。 抜き加工で、加工力を軽減する目的で使われているシヤー角を利用します。シヤー角をパンチもしくはダイにつけることで、打ち抜き加工力を軽減します。このときに、抜かれた材料はシヤー角形状に倣う形となります。この特徴を利用した曲げが、ここで紹介する曲げ方法です。タグ:
- L曲げなどの押さえ曲げの加工では、曲げ後にダイから製品が離れるときに変形が起こることがあります。【図1】で説明します。 加工される材料は、ストリッパで押さえられて加工されます。このときに、加工された製品がダイに食いついてしまう対策として、ノックアウトで外すように設計することが多いですが、まだ、ストリッパで材料を押さえているうちにノックアウトが働いて、曲げた製品を押上て変形させてしまうものです。 これは、金型設計を下死点の状態で作図しているときに起きるミスです。戻り行程への配慮が欠けたためのものです。 ノックアウトの動作タイミングを遅らせる工夫が必要だったのですが、それが配慮されていなかったことが原因です。対策の例を示します。タグ: