射出成形:基礎知識(成形条件)
- 成形条件の作り方は、金型形状や不良状況によって様々である。一概に「これが正解」というものはなく、顧客要求に合致することが重要だ。そしてそれは経験に勝るものはない。しかしながら、先に「知識」を付けることでトラブルやミスなどを防止することができるのも事実である。ここでは積極的に条件作りのチャレンジするために知っておきたい基本知識を紹介する。
- 1.スクリュー回転数 プラスチック射出成形条件におけるスクリュー回転数は、ペレットを混練するためのスクリューの回転数のことです。単位はrpm(回/分)です。 スクリュー回転数が早すぎると溶融樹脂内にエアーを巻き込んでしまいガスが発生しやすくなる場合があります。またスクリュー回転数が遅すぎると十分な混練ができず材料品質がばらついてしまう場合が考えられます。 2.スクリュー背圧 スクリュー背圧は、材料の計量時にスクリューが後退する際の圧力をさします。単位は、MPa、またはkgf/cm2です。背圧の変化により材料の混練状態が変動します。 3.金型開閉速度 金型開閉速度は、金型の開く速度、閉じる速度のことで、単位はmm/sです。金型開閉時間は短いほうがサイクル短縮に効果的ですが、型閉速度が速すぎると金型が急激に衝突する危険性が高くなってしまうので直前でブレーキをかける必要があります。 また型開き速度が速すぎると離型の状態が変動してしまい品質を変動してしまう場合があります。タグ:
- 1.冷却時間 プラスチック射出成形条件における冷却時間は、成形品を金型内で固化させておく時間のことです。保圧が終了すると冷却時間に切り替わります。単位はs(秒)です。 冷却時間が短すぎると収縮が大きくなり寸法が小さくなってしまい、突き出し時に変形してしまう場合もあります。 一方、冷却時間が長いと成形サイクルが長くなり生産性が低下します、つまり成形品の加工コストが上昇することになります。冷却時間は成形サイクルの要素の中で最も支配率が大きな要素なので成形サイクルを短縮するためには冷却時間をいかに短くできるかが重要な鍵を握っています。 2.計量位置 計量位置は、スクリューやプランジャーが射出に必要な体積の樹脂を計量するための位置のことです。単位はmmです。 計量位置が短すぎると充填不良が生じます。計量位置が長すぎるとシリンダー内に余分な樹脂が滞留して焼けが発生したり、ガスが発生する場合があります。計量位置は成形品の射出体積を考慮して少なすぎず、多すぎない妥当な分量の樹脂を毎回計量できる位置を最善とします。
- 1.充填圧力 プラスチック射出成形条件において、充填圧力は、樹脂を金型内へ充填させるための圧力のことで、一次圧力とも呼ばれています。単位は、MPa、またはkgf/cm2です。つまり、圧力の単位となります。射出成形機の最大射出圧力を100%としてその何%であるかを変化させて条件調整をする機械もあります。(例:35%) 充填圧力が低すぎる場合には充填不良(ショートショット)が発生します。充填圧力が高すぎる場合にはパーティング面が圧力で瞬間的に開いてしまい成形品の周囲にバリが発生する場合もあります。また金型からの離型不良が生ずる場合もあります。 2.射出速度 射出速度は、金型内へ溶融したプラスチックを充填する際のスピードのことです。単位はmm/sとなります。 単位時間あたりの射出体積として考えた場合には「射出率」として表示する場合もあります、この場合には単位はcm3/sとなります。 射出速度が遅すぎる場合には充填不良が発生する場合があり、射出速度が速すぎる場合にはバリ、ジェッティング(成形品表面に蛇行した模様が発生する不良)が発生する場合があります。
- 1.射出成形機の成形条件 プラスチック射出成形機を操作して実際の射出成形加工をするためには成形材料、金型とを用いて成形品の仕様にマッチングさせた状態の成形品を加工しなければなりません。単純に金型内に溶けたプラスチックを射出注入し、固化させて取り出しただけでは、成形品の寸法は大きくばらつき、外観の光沢や転写もむらが生じ、均一な品質の成形品を得ることはできません。 所望の品質の射出成形品を得るためには射出成形機の「成形条件」と呼ばれている各種の調整パラメータを調節し、寸法や外観の品質をコントロールしながら仕様を満たすように条件調整作業が必要になります。 つまり、成形条件の調整の良し悪しによって金型から生産されるプラスチック射出成形品の品質は左右されるということになります。この条件調整のパラメータの調整範囲が広ければ品質仕様を変化させられる範囲も広くなり調整がしやすくなります。「金型の出来が良い」と一般に言われる場合にはこのような条件調整の幅が広いことが多いです。翻って考えれば、金型設計の際には成形条件の調整幅が広く設定できるような配慮をしておくことが大切であると言えます。例えば、冷却回路の流量が十分に確保できるように設計する、ガスベントを的確に設けて高速充填しても焼けが発生しにくく工夫する等です。