耐熱性に優れ、高い機械強度を持つプラスチックとしてアラミド(aramid)が挙げられます。アラミドは、芳香族ポリアミド(aromatic polyamid)のことで、略語からアラミドと呼ばれています。
ポリアミド(polyamid)は、デュポン社の商標名「ナイロン(Nylon)」として著名ですが、ポリアミドは、脂肪族ポリアミドに分類されるために、これらと芳香族ポリアミドは別の種類であるとして区分けされるのが一般的です。
アラミドには、メタ型アラミドとパラ型アラミドがあります。
メタ型アラミドは、耐熱性に優れています。代表的な樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがあります。分子構造に2個のベンゼン環を持っています。低温溶液重縮合という特殊な製法で作られています。メタ型アラミドは、1500℃程度の火炎に対しても燃焼しない特性があり、消防服や防炎素材として広く活用されています。
パラ型アラミドは、機械強度に優れています。代表的な樹脂として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドがあります。これも分子構造中に2個のベンゼン環を持っています。
航空機やスペースシャトルの床材や壁材として、メタ型アラミドとパラ型アラミドのハニカム構造体が実用化されており、軽量で高強度、防炎性にすぐれた素材として多用されています。
アラミド樹脂は、このような特殊で抜群の特性を示す素材でありますが、価格は高い素材です。したがいまして射出成形で生産される一般部品にはなかなかコスト面で折り合いがつかず、採用されるケースはほとんどありませんでしたが、軽量化や安全性などを考慮した次世代の自動車や家電製品等での利用がさまざまなジャンルで検討されるようになってきています。これからはアラミド樹脂の射出成形技術や金型技術の開発が必要になってくると思われます。
経済が停滞すると、新しい価値観を創造するために世界中の人々は知恵を発揮します。
その結果、新しい素材や加工法が開発されてきたのが人類の歴史でありました。今回の未曾有の経済危機からようやく光明が差してしたのですが、新素材の加工技術はその一つであると考えてよいと思います。過去の経験に縛られず、新しいジャンルへ挑んでいく取り組みが飛躍するためには乗り越えなくてはならない試練でありましょう。