プラスチック射出成形金型の部品の一部が摩耗により摺り減ってしまったり、コーナー部をぶつけて欠けてしまったりした場合に、それらの部分を補修する方法として溶接があります。精密金型においては溶接による高温や酸化層の形成によって金型部品が大きなダメージを受けますので、溶接はあまり採用されませんが、大きな金型や成形品の外観品質が厳しくない場合や応急修理では溶接は重要な補修技術になります。そこで、溶接の概要について解説します。
1.溶接の種類
金型の補修用の溶接の種類としては下記2種類に大別されます。
- (1)
- ろう付け
- (2)
- ガス溶接
- (3)
- 電気溶接
2.各溶接法の特徴
- (1)
- ろう付け
ろう付けは、はんだや銀などを炎であぶって溶融させて、補修部分に肉盛りをする方法です。母材である炭素鋼と異なる金属材質で補修をしますので、接合部の強度はあまり強くありません。しかし、溶接作業は簡便ですので急いで応急修理をする場合には向いています。 - (2)
- ガス溶接
一般には酸素アセチレン溶接のことを指します。ガスボンベから酸素とアセチレンガスを供給し、着火させて炎の中に溶接棒を供給しながら溶接を行います。溶け込み部の接合強度は電気溶接に比べて低いが、十分な補修目的を果たすことができます。電気溶接に比較して母材への熱影響が少ないので変形をきらう金型に適しています。 - (3)
- 電気溶接
交流または直流の電流をアーク発熱させて溶接する方法です。この溶接では主に3種類の方法が採用されています。
- 1)
- 被覆アーク溶接
被覆溶接棒によるアーク溶接。一般の機械部品の溶接で多用されている。 - 2)
- 炭酸ガスアーク溶接
炭酸ガスのガスシールド内で溶接を行う。溶接部の酸化を防止できる。 - 3)
- イナートガス(不活性ガス)アーク溶接
アルゴンガス等の不活性ガスシールド内で溶接を行う。金型の補修には最も適している方法である。
溶接部の酸化を確実に防止でき、酸化物の発生を抑止できるので磨きをしても巣の発生や気泡の発生を生じにくい。ただし、作業コストが高くなり、設備を保有している企業でないと対応ができない制約がある。