[2023/3/1公開]
ワイヤーカット放電加工とは
放電加工とは、電極と加工物との間で放電をすることで工作物の一部を除去する機械加工の方法です。加工種類は、型彫り放電加工、ワイヤー放電加工、細穴放電加工の3種類あり、その中でも切削加工技術では困難な硬い金属や複雑な形状加工にて、おもに使用されるのがワイヤーカット放電加工です。
細いワイヤー状の電極を使い、糸ノコのように金属を切断・貫通し、電極のNC制御によって、2次元の微細な輪郭加工が可能となります。加工には、「ワイヤーカット(NCワイヤ放電加工機)」が使われます。
ワイヤー電極線選定・加工時のポイント
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ワイヤーの太さ
ワイヤーの太さの選定は、加工精度と加工コストに大きな影響を及ぼします。
ワイヤーの太さ(直径)は、0.03~0.3ミリメートルで、被加工物(ワーク)の形状精度によって使い分けをします。細いワイヤーはコーナー部のRを小さく加工できますが、切れやすいという特徴もあります。 -
加工液
ワイヤーカット放電加工の場合は、加工液として油を用いる場合と水を使用する場合があります。油と水では絶縁抵抗値が異なるため、所望する表面の精度、機能によって加工液を選定します。 加工液は、使い捨てではなく、循環して再使用しますが、水質の維持、加工粉の除去を適切に行う装置を用いないと加工精度が低下してしまうため注意が必要です。 -
ワイヤーの保持精度
ワイヤーの保持精度によって、加工面の断面が太鼓状に湾曲してしまう場合があるため加工条件としては重要なポイントになります。
ワイヤーの保持は、2箇所のガイドで行います。また、ワイヤーは送り装置によってリールから供給され、使い捨てとなります。ワイヤーカット放電加工では、2回以上、多い場合には6回もの加工を繰り返すことによって寸法精度や表面粗さを調整します。これにより、それぞれの加工時の電気条件や加工条件を最適化します。 -
加工順番や下穴加工
ワイヤーカット放電加工でくり抜く場所の加工順番や下穴加工も、寸法精度を左右する大きなノウハウです。事前の予備加工や加工手順のプログラムを組む前に慎重に検討をするかどうかで、加工後の品質は大きく左右されます。
銅と亜鉛の比率とは
ワイヤー電極線は、銅と亜鉛で作られており、商品によって銅と亜鉛の比率が異なります。
この比率は、一般的に銅:亜鉛=60:40、65:35 の2種類があります。銅:亜鉛=60:40の方がカット速度が速く、銅:亜鉛=65:35の方が真直度が高く自動結線に適しております。2種類に大きな違いは無いため、比率差による加工精度や速さ等の明確な差は生じないと言われておりますが、現在は銅:亜鉛=60:40が主流のため、こちらを使用されることを推奨いたします。
ノンパラフィンとパラフィン有の違い
パラフィンは、ワイヤー電極線表面の酸化を防ぎ、粉落ちを減少させることができます。その一方で、加工液を汚染させてしまうという難点もあります。2000年以降の放電加工機は、基本的にノンパラフィンで適応可能と言われており、ノンパラフィンが主流です。
ミスミでは一部シリーズでパラフィン有も取り扱いがございます。詳細は以下をご確認ください。
【取り扱い商品】
商品情報 | パラフィン | |||
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商品名 | タイプ | メーカー | なし | あり |
ワイヤー電極線 銅:亜鉛=65:35タイプ【1~4個入り】 | BMWC/BMWT | ミスミ | 〇 | 〇 |
ワイヤー電極線 銅:亜鉛=65:35タイプ【1~4個入り】 | MBWC/MBWB | 〇 | 〇 | |
ワイヤー電極線 銅:亜鉛=60:40 タイプ【1~4個入り】 | MBWT/MBWS | 〇 | 〇 | |
ワイヤー電極線 銅:亜鉛=60:40 タイプ【1~4個入り】 | GMWC/GMWT | 〇 | - | |
ワイヤー電極線 高速加工用タイプ【1~4個入り】 | BBHP | 〇 | - | |
ワイヤー電極線 高精度加工用タイプ【1~4個入り】 | BBPG | 〇 | - | |
電極線 SPワイヤー 精密加工用 | SPWH | 〇 | - | |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 SHシリーズ 高速加工用ワイヤー 1巻タイプ | - | チバ・テクノ | 〇 | - |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 SHシリーズ 放電加工用ワイヤー【1~4個入り】 | - | 〇 | - | |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 THシリーズ 銅:亜鉛=60:40【1~6個入り】 | - | 〇 | 〇 | |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 THシリーズ 銅:亜鉛=60:40 1巻タイプ | - | 〇 | 〇 | |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 RHシリーズ 銅:亜鉛=65:35【1~4個入り】 | - | 〇 | 〇 | |
CT-Wire 硬質黄銅線ワイヤー電極 RHシリーズ 銅:亜鉛=65:35 1巻タイプ | - | 〇 | 〇 | |
ワイヤ電極線 OBシリーズ【1~6個入り】 | - | 沖電線 | 〇 | 〇 |
スミスパークガンマ線 (SSγ) | - | 住友電工 | 〇 | - |
スミスパーク(R) TWS | - | 〇 | - |
線径の選び方
線径に関しては、加工するワークの寸法に応じて選定することが推奨されます。線径0.02mm~0.07mmは極細線で、一般的には鋼の芯材が用いられています。線径0.2mmと0.25mmは汎用性が高いとされています。
線径に応じて推奨される加工内容や速度・精度が変わりますので、以下をご参考ください。
推奨される使い分け | ||||
---|---|---|---|---|
線径(mm) | 速度 | 精度 | 加工機 | ワーク |
0.02~0.07 | 遅 速 |
高 低 |
油用加工機 | 寸法の小さいワーク、表面精度および面粗度を重視するワーク、小さいRがあるワーク |
0.1~0.15 | 高精度の水用加工機や油用加工機 | 小さなワーク、面粗度を重視するRの小さいワーク | ||
0.2~0.25 | ある程度のR角度のワーク | - | ||
0.3 | 水用加工機や速度効率を重視する加工機 | - |
※上記の使い分けは、加工条件や加工物により変化するためあらかじめご了承ください。