FA の現場においては省配線・インテリジェント化等を目的とした種々のネットワーク方式が広く普及してきている。これらのネットワークはFAネットワーク、フィールドネットワーク、フィールドバス等と呼ばれ、特にその中でもネットワーク仕様を公開し、多くのメーカーが接続製品を開発・販売しているオープンネットワークが普及している。ここでは、それらのうち主要なネットワークについて解説する。
CC-Link
概要
CC-Link は、CC-Link 協会(CLPA:CC-Link Partner Association)が提唱するネットワーク方式で、PLC と種々のフィールド機器をつなぐフィールドレベルのネットワークである。三菱電機株式会社殿による仕様策定当初より、10Mbpsの高速な通信速度を誇り広く普及している。CC-Link協会に加盟しているパートナーメーカー数は2006年3月時点で745社を数え、また国内メーカーのみならず海外メーカーの参加も増えており、海外での採用事例も増えてきている。
配線
CC-Link専用ケーブル(3心ケーブル)を使用する。新規設備の場合には原則としてVer.1.10タイプのケーブルを使用すること。
Ver.1.10タイプの標準ケーブルを使用し、T分岐を行わず、かつリピータユニットを使用しない場合の最大伝送距離は下表の通りである。
表1.通信速度とケーブル長
通信速度 | 156kbps | 625kbps | 2.5Mbps | 5Mbps | 10Mbps |
---|---|---|---|---|---|
局間ケーブル長*1 | 20㎝以上 | ||||
最大ケーブル総延長*2 | 1200m | 900m | 400m | 160m | 100m |
注釈
- *1
- 隣接する機器間のケーブルの長さの最小値
- *2
- 末端のCC-Link機器からもう一方の末端のCC-Link機器までの間のケーブルの長さの総和の上限値
可動部用のケーブルについては、標準ケーブルよりも最大ケーブル総延長が短くなる。標準ケーブルに対して伝送できる長さが30%、50%、70%の3種類が規定されており品名の末尾にそれぞれ-3,-5,-7をつけて表記することとなっている。例えば弊社のFANC-110SBZ-5の場合には、10Mbpsにおける伝送可能距離は最大50mまでとなる。また、10Mbps時に可動部用ケーブル(50%タイプ)を10m使用した場合、残りを標準ケーブルで配線する場合には、標準ケーブルの長さは最大80mまでとなり、トータル90mまでの配線が許容される。詳細はCC-Link敷設マニュアルをご参照のこと。
CC-LinK/LT
概要
CC-Link/LTは、CC-Link協会が提唱するCC-Linkの下位に位置する盤内・装置内等の機器・I/O制御を主な用途とするセンサレベルのネットワークである。CC-Linkの省配線性を向上させ、1本のケーブルで通信線及び通信用電源線を一括配線する仕様となっている。
配線
専用フラットケーブル、キャブタイヤコード(VCTF)、専用可動部用ケーブルが使用可能。
T分岐を含むバス配線が可能。通信速度と最大幹線長、支線長などの仕様は下表の通りである。
表2.通信速度とその他仕様
通信速度 | 2.5Mbps | 625kbps | 156kbps | 備考 |
---|---|---|---|---|
支線最大接続台数 (1分岐当り) |
8台 | |||
最大幹線長 | 35m | 100m | 500m | 終端抵抗間のケーブル長 (支線長は含まない) |
T分岐間隔 | 制限なし | |||
最大支線長 | 4m | 16m | 60m | 1分岐当りのケーブル長 |
総支線長 | 15m | 50m | 200m | 支線長の合計 |
注釈
- 参考資料:
- CC-Link協会ホームページ(https://www.cc-link.org/)
DeviceNet
概要
DeviceNetはODVA(Open DeviceNet Vendor Association)が提唱するネットワーク方式で、PLCと種々のフィールド機器をつなぐフィールドレベルのネットワークである。北米を中心として広く普及しており、ODVAメンバー数は2006年8月現在で279社であり、世界各地で接続機器の入手が可能。通信速度は500kbpsと他のネットワークに比べて低速だが、回線効率が高く高速な応答を実現している。また、配線方式も通信線・通信用電源線が一体となった専用ケーブルを使用しスター結線、マルチドロップ、T分岐など自由度の高い配線が可能である。
配線
通信線と電源線が一体になった専用ケーブルがDeviceNet仕様にて規定されている。弊社ではTHINタイプとTHICKタイプを販売している。
スター結線、マルチドロップ、T分岐など自由度の高い配線が可能である。通信速度及び使用するケーブルの種類によって、幹線の最大の長さが異なる。Thick cable 及びThin cable を使用した場合の幹線長さ、最大支線長さ及び総支線長さは下表の通りである。
表3.通信速度と幹線長さ
通信速度 | 125kbps | 250kbps | 500kbps | |
---|---|---|---|---|
幹線長さ | Thick cable 使用時 | 500m | 250m | 100m |
Thin cable 使用時 | 100m | 100m | 100m | |
最大支線長さ | 6m | 6m | 6m | |
総支線長さ | 156m | 78m | 39m |
注釈
- 参考資料:
- ODVAホームページ(https://www.odva.org/)
PROFIBUS
概要
PROFIBUSとは、1980年代にドイツでSiemens,Bosch,ABB等が共同で開発したフィールドバスで、現在はPROFIBUS協会の下で欧州を中心として世界中に最も広く普及しているオープンネットワークである。
PROFIBUSには使用目的に応じて最適な使い分けができるようにFA(ファクトリーオートメーション)用のPROFIBUS-DPとPA(プロセスオートメーション)用のPROFIBUS-PAがある。PROFIBUS-DPはオープンなフィールドバスの中で最も高速な通信速度12Mbpsを誇る。また、PROFIBUS-PAはIEC61158で定められた電気仕様に準拠しており、2線式電源供給と防爆仕様に対応している。
配線
特性インピーダンス150Ωの専用ケーブルを使用する。
専用ケーブルを使用した場合の通信速度と伝送距離は下表の通り。尚、通信速度が3Mbps以上の高速な場合には機器間のケーブル長を1m以上にすることが推奨されている。詳細は日本プロフィバス協会発行の「PROFIBUS DP ケーブルと機器設置の解説」等を参照のこと。
表4.通信速度と距離/セグメント
通信速度 | 9.6kbps | 19.2kbps | 93.75kbps | 187.5kbps | 500kbps | 1.5Mbps | 12Mbps |
---|---|---|---|---|---|---|---|
距離/セグメント | 1200m | 1200m | 1200m | 1000m | 400m | 200m | 100m |
注釈
- 参考資料:
- 日本プロフィバス協会ホームページ(http://www.profibus.jp/index.html)
CompoNet
概要
CompoNetは2006年にODVAより仕様化されたセンサ&アクチュエータレベルのネットワークである。(1000点約1msの高速応答、最大ノード数384台、最大入出力点数2560点)使用ケーブルには、低コストで汎用性の高い丸型(VCTF)ケーブルと、圧接加工で施工性に優れたフラットケーブルの2種類がある、高速通信・配線性・情報化・コストパフォーマンスに優れたネットワークである。
配線
専用フラットケーブルⅠ(シース無し仕様)、専用フラットケーブルⅡ(シース有り仕様)、丸型ケーブルⅠ(2心VCTFケーブル)、丸型ケーブルⅡ(4心VCTFケーブル)が使用可能である。弊社では、CompoNet 仕様に適合した、専用フラットケーブルⅠ:KOMP-F Ⅰ、専用フラットケーブルⅡ:KOMP-F Ⅱ、丸型ケーブルⅠ:KOMP-R Ⅰ、丸型ケーブルⅡ:KOMP-R Ⅱを販売している。
マルチドロップ、T分岐などの自由度の高い配線が可能である。通信速度及び使用するケーブルの種類、支線の有無によって、幹線の最大の長さが異る。CompoNetの通信仕様は下表の通り。
表5.通信速度とケーブルタイプ
通信 速度 |
ケーブルタイプ | 1セグメント最大長 (リピータ使用時最大長) |
1セグメント あたりの支線長 |
1セグメント あたりの支線総長 |
支線箇所 制限 |
支線あたりの 接続台数制限 |
1セグメント あたりの 副支線最大長 |
1セグメントあたりの副支線総長 | 1セグメントあたりのスレーブ台数(リピータ含む) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4Mbps | 丸型ケーブルⅠ・Ⅱ フラットケーブルⅠ・Ⅱ |
30m (90m) |
0m | 0m | - | - | 0m | 0m | 32台 | |
3Mbps | 丸型ケーブルⅠ・Ⅱ フラットケーブルⅠ・Ⅱ |
30m (90m) |
0.5m | 8m | 3本/m | 1台 | 0m | 0m | 32台 | |
1.5 Mbps |
丸型 ケーブルⅠ |
支線 なし |
100m (300m) |
- | - | - | - | - | - | 32台 |
支線 あり |
30m (90m) |
2.5m | 25m | 3本/m | 3台 | 0m | 0m | 32台 | ||
丸型ケーブルⅡ フラットケーブルⅠ・Ⅱ |
30m (90m) |
2.5m | 25m | 3本/m | 3台 | 0.1m | 2m | 32台 | ||
93.75 kbps |
丸型ケーブルⅠ | 500m (1500m) |
6m | 120m | 3本/m | 1台 | 0m | 0m | 32台 | |
丸型ケーブルⅡ フラットケーブルⅠ・Ⅱ |
200m (600m) |
1セグメントあたりの総配線長200mのフリー配線 | 32台 |
注釈
- 参考資料:
- CompoNet Adaptation of CIP , Edition 1.4
産業用Ethernet
概要
Ethernetの汎用性・高速性・将来性・廉価性を理由に、産業用ネットワークの物理層として採用する動きが盛んである。CC-Link協会のCC-Link IE Field, ODVA のEtherNet/IP, PROFIBUS 協会のPROFINET,日本電機工業会のFL-netなどを始めとして、多くの方式がEthernet方式への対応を行っている。
単純にネットワーク媒体をEthernetに置き換えるというだけでなく、情報系のネットワークとシームレスにつながるという利点を生かして階層間での透過性を高めたり、HMI(Human-Machine Interface)の向上を図るためWeb技術を導入したり、将来的にはコントローラレベルからセンサレベルまでをすべてEthernetでカバーしようとする動きもある。
配線
産業用Ethernet においては、一般的なオフィス等で使われている通常のLANケーブルも使用できるが、産業用の現場においてはオフィスに比べて過酷な環境となる。よって、2重シールドタイプや耐油タイプなど、使用する場所の環境に対応したケーブルが必要となる。
倉茂電工社資料より参考