「電線保護のために熱収縮チューブを使用してみたがうまく収縮しない」などといった利用におけるトラブルに関する声を聞くことが多い。ここでは熱収縮チューブを正しく使用するにあたって知っておきたい注意事項について紹介する。
熱収縮作業時の注意点
熱収縮チューブを収縮させる際は、チューブ内への空気の封入を防ぐため、チューブの真中から両端に向かって収縮させること。特に、長いチューブや接着剤付きの熱収縮製品を熱風機器で収縮させる場合に有効である。
長さ方向の収縮変化率が気になる場合は、チューブの両端の次に真中を収縮させると長さ方向の収縮を少なくでき、空気の封入に留意する必要がある。
熱収縮製品は、熱をかければかけるほど早く収縮するが、熱収縮200℃~220℃前後が最適である。チューブの収縮状態を確認しながら、収縮温度条件の確認が必要である。
熱収縮作業時に使用する熱源で、火傷を負わないよう十分注意が必要である。鋭い突起状で収縮するとチューブが破れる恐れがある。
表1.収縮器具について
工業用ドライヤー (熱風機器) |
オープン | 直下 |
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薄肉のチューブの収縮で、最も一般的。 | 加熱炉よりも対流式オーブンが望ましく、大量の使用にはベルトコンベヤ・オープンが使用される。 | 中肉及び厚肉のチューブの収縮には、火力調整機能つきの強力なガストーチでも作業が可能である。収縮させる加熱方法に熟練が必要であり、危険性も高いため、工業用ドライヤの使用を勧める。 |
切断時の注意点
熱収縮チューブを定尺に切断する際、傷ができると収縮する時に裂けやすくなるため注意が必要である。できるだけ一工程でカットするのが理想である。何度もハサミを入れると、傷ができやすく、避ける危険性がある。
切断の際は、横方向だけではなく長さ方向にも収縮することを顧慮する必要がある。
保管時の注意点
直射日光、暖房器具の付近、高温多湿の部屋なとでの保管は避け、冷暗所(50℃以下)で保管すること。
装着した熱収縮チューブの取り外し方
一度、装着された熱収縮チューブは、一方の先端2~3cmの切り込みを入れ、熱を加えると、チューブが長さ方向に裂けて外すことができる。
連続使用温度について
熱収縮チューブは、UL規格で規定されている老化条件を参考に規定している。連続使用温度についても、安全規格(UL,MIL規格など)に準拠し、対応する定格温度の中では最も高い温度を表示している。
なお、内面に接着剤層を設けた製品は、外装の材料特性温度で兼ねるされると、接着剤が溶融し、位置ズレを起こす場合も考えられるため、使用者は、確認の上、使用が必要だ。
難燃グレード「VW-1」とは?
UL224規格及びCSA規格に規定される難燃グレードで、垂直難燃試験に合格する製品に対してのみ認定を受けることができる「VW-1」は、UL224規格に規定されている。「ワイヤー(wire)をチューブに挿入し、垂直(vertical)に保持した状態で燃焼させた時、1分(miniute)いないに消炎すること」が要求されるために、この名称が付けられている。
なお、難燃グレードとしてUL94規格の「V-0」は、「成型品用樹脂材料」に関する規定で、シート状の資料で難燃性を評価するものであり、熱収縮チューブに関して適用されるものではない。「VW-1」の試験に合格した製品は、UL94-V0相当の難燃性と一般的に言われている。
ヘラマンタイトン社資料より参考