ローコストオートメーションの生い立ちは、60年代〜70年代の高度成長期における労働力不足に対する技術的手段からといえます。しかし、その後のグローバル競争の流れを受け、国内の製造業は、短命・高品位・多品種を短納期・低価格に生産することが恒常的に求められています。組立部門では、セル生産方式が代表的手段として進歩していますが、作業者への教育負担・品質維持の課題・生産拡大の限界などの課題が挙げられます。
■国内の製造業を取り巻くマクロな課題
- 低賃金国への海外生産シフト
- 貿易摩擦回避策のためのW/W生産体制の構築
- 国内の労働力不足と高賃金対策
- 2007年問題(団塊世代の退職による技術・技能の空洞化リスク)
- 商品サイクルの短命化とコンカレントエンジニアリング策の限界
- 第三次産業の生産性の低さ
- ………
- ………
以下では、精密工学会:生産自動化専門委員会の2005年度レビューの要点を紹介します。
- 「生産ラインの世界同時立ち上げ」戦略の重要手段として自動化技術が再度注目を浴びている。
- 低開発国の作業者の教育による生産と品質保証の手段から、品質保証しやすい自動化機器へのシフト傾向がある。
- しかし、これらの自動化機器も、将来的にはそれらの国で製造される。
- 日本の自動化機器の成長路線として、次の2テーマを精密工学会:生産自動化専門委員会は挙げた。
a)生産自動化技術を他の産業へ展開すること
b)自動化技術とプロセス技術をつなげること - a)は例えば、第三次産業への自動化の展開など。日本国内の豊かさを追求するなら、第三次産業、特にサービス産業の自動化が求められる。
- b)は例えば、機械でしかできないプロセスを迅速に、低コストで自動化すること(即ち、ローコストオートメーション化)。
- a)、b)ともに楽な道ではないが、精密工学会:生産自動化専門委員会は、a)をテーマ選択している。
- a)テーマの選択は、自動化の狙いを「人間の能力の拡大」と置いた上で、マーケットの大きさを考慮して成されている。
- 第三次産業の生産性向上に対する解決策には、情報技術と自動化技術の結合が求められる。