射出成形用部品
- ショートショット(shortshot)は、成形品の一部に不完全な充填が起きる現象です。 ショートショットには、性格的に2種類の原因が考えられます。 1つ目は、溶融樹脂が流動する途中で、流動先端部分が冷却固化するために発生するものです。 2つ目は、流動する過程で、流れの状況によって空気溜まり(エアトラップ、air trap)が生ずるために発生するものです。 ショートショットの解決対策としては、上記のいずれのタイプであるかを確認する必要があります。
- 射出成形加工を行っている時に、成形機を一次停止したままにしておくと、射出シリンダーの中の溶融プラスチックが熱分解を起こすことがあります。 熱分解が発生すると、下記の現象が発生します。
- プラスチック成形材料には、強度を向上させる目的などで、様々な充填材や強化材がコンパウンドされます。 主な充填材には下記のようなものがあります。 ガラス(Glass) 炭素(Carbon) 炭酸カルシウム(Calcium carbonate) タルク(Talc) 雲母(Mica) 鉱物(Mineral) けい素(Silicon) 硼酸(Boron) クレイ(Clay) セルロース(Cellulose) アラミド(Aramid) 木材(Wood) 強化材がコンパウンドされますと、成形収縮率がナチュラル材と比較して小さくなったり、樹脂流動方向と直交方向で収縮率に差が発生したり、分子配向が顕著になったりすることがありますので、金型設計の際には留意が必要になります。
- ポリメチルペンテン(Polymethylpemtene)は、立体規則性ポリオレフィンであり、透明性のある成形材料です。 家電、医療機器、食品関係で採用されることが多い、結晶性プラスチックです。食器洗浄機部品、耐熱電子レンジコンテナ、アイロンの水入れ、回路基板、ピペット、注射器、ビーカー等に使用されています。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリエーテルイミド(Polyether imide、PEI)は、電子産業において活用されている成形材料です。非晶性プラスチックであり、ポリカーボネイトとポリマーアロイとして使用される例もあります。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリアミドイミド(Polyamide-imide、PAI)は、荷重たわみ温度が180℃程度であり、高温で高い強度を有する成形材料です。 ガラス繊維、カーボン繊維、グラファイトなどで強化したグレードは、高温環境において優れた摺動特性があります。 産業用途事例としては、油圧機器シール、リレー、ソケット、スイッチ、ボビン、ギヤ、ベアリング、内燃機関エンジン部品、ジェットエンジン部品、SMT部品などがあります。 主な特徴は、下記の通りです。
- ポリエーテルサルホン(Polyethersulfone、PES)は、耐熱水性に優れた非晶性プラスチックです。 食品産業用部品や排水用部品、半導体超純水関連部品、電子部品、ヘッドランプリフレクター、調理機器部品などに採用されています。 ガラス強化される場合もあります。 下記のような特徴があります。
- ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone、PEEK)は、英国ビクトレックス社が開発した芳香族系熱可塑性プラスチックです。 融点が330℃程度であり、優れた耐熱性を有しています。ガラス繊維で強化することにより、強度を向上させて使用される例が多いようです。 用途としては、半導体や液晶パネルの製造装置部品、プロジェクターのランプ筐体、電池用パッキン、IC用ソケット、コネクター、自動車部品等が挙げられます。 主要な特徴は下記の通りです。
- ポリイミド(Polyimide、PI)は、耐熱性が特に優れた成形材料です。荷重たわみ温度は、250〜360℃とプラスチック材料では最高水準にあります。つい最近では、射出成形が可能なグレードも開発されてきています。 ポリイミドは、全芳香族ポリイミド、半芳香族ポリイミド、熱硬化性ポリイミドがあります。射出成形用には、半芳香族ポリイミドが主に使用されているようです。 実用的な用途例としては、コピー機の加熱ローラー軸受け・断熱軸、半導体製造装置用耐熱トレイ、航空機部品、人工衛星部品などがあります。今後は、自動車部品や電子部品にも採用の可能性があります。 下記のような特徴があります。
- シンジオタクチックポリスチレン(Syndiotactic Polystyrene,SPS)とは、メタロセン触媒を利用して合成されたポリスチレンです。 シンジオタクチックの意味は、立体規則性があるという意味で、下記のような優れた特徴があります。 実用的な用途例としては、計器の筐体、洗面化粧台部品、浴室部材、エアコン部品、自動車用ソレノイド部品等があります。この樹脂は、1985年に出光興産株式会社が開発しています。
- 筑波大学教授 白川英樹先生がノーベル化学賞を受賞されたことは、皆さんの記憶にもまだ新しいと思います。 白川先生の研究されていた内容は、導電性プラスチックに関するものです。導電性プラスチックは、電池材料や電子部品材料として、今後有力な材料として期待されています。 導電性プラスチック(高分子)は、下記のような種類があります。 ポリアセチレン系 ポリフェニレン系 複素環高分子 イオン性高分子 ラダー及びネットワーク状高分子 この中でも、ノーベル賞受賞の対象となったものが、ポリアセチレンです。 【図1】にはポリアセチレンの分子構造を示します。タグ:
- プラスチック成形材料には、その性質を安定させたり、特徴を付加するために様々な添加剤が使用されています。 プラスチックは、温度、湿度、光、放射線などによって劣化を起こすことが知られておりますが、劣化から材料を防御したりするためにも添加剤は使用されています。 以下に、プラスチック成形材料に使用される主要な添加剤を紹介します。タグ:
- 射出成形加工の原材料であるプラスチック材料は、原油や天然ガス等に含まれている成分を化学合成して生産されています。 実際に射出成形金型を設計する上では、プラスチック材料の成分や化学構造式は、さほど気にかける存在ではありませんが、ここで少し原材料の化学構造式について、振り返ってみましょう。 【表1】には、主要なプラスチックの化学構造式を示しています。 構造式の中の記号は、以下の意味を示しています。 【表1】プラスチック材料の化学構造式
- プラスチック射出成形金型は、量産の成形加工で使用されますと、摩耗や錆び等の原因によって金型の機能が低下してゆきます。これらの機能低下を修復するためには、メンテナンス(保守管理)が必要です。 プラスチック射出成形金型のメンテナンスの重要ポイントとしては、下記のような箇所に留意することが推奨されます。
- プラスチック射出成形金型のキャビティ表面温度は、成形品の寸法や外観を左右する重要なファクターです。 金型には通常、冷却回路が設けられており、冷媒(水や油)が供給されて、成形品を冷却します。 キャビティ表面温度は、冷媒の供給温度をコントロールすることによって制御されますが、冷媒の設定温度によって、キャビティの表面温度はいくらになっているのかを、計算によって概略推測することが可能です。 ■計算の前提条件 金型の冷却効率が良好な冷却回路が設けられていること。すなわち、十分な長さの冷却回路が、キャビティ近傍に設けられていることが必要です。 ■計算式 キャビティ表面温度θ=(pr・θr+pm・θm)/(pr+pm)タグ:
- 問題 成形材料がABS樹脂(ナチュラル材)である肉厚1.5mmの射出成形品を冷却するための必要冷却時間はどのくらいになるか? ただし、キャビティ表面温度50℃、溶融樹脂温度230℃、成形品の離型温度90℃とする。 解答例 s:成形品の肉厚 1.5(mm) α:キャビティ表面温度における樹脂の熱拡散率 α=λ/(c・ρ) λ:樹脂の熱伝導率(kcal/m・h・℃) c:樹脂の比熱(kcal/kg・℃) ρ:樹脂の密度(kg/m3) ABS樹脂(ナチュラル材)のキャビティ表面温度50℃における α=0.0827(mm2/sec)タグ:
- 問題 成形材料がABS樹脂(ナチュラル材)である肉厚1.5mmの射出成形品を冷却するための必要冷却時間はどのくらいになるか? ただし、キャビティ表面温度50℃、溶融樹脂温度230℃、成形品の離型温度90℃とする。 解答例 s:成形品の肉厚1.5(mm) α:キャビティ表面温度における樹脂の熱拡散率 α=λ/(c・ρ) λ:樹脂の熱伝導率(kcal/m・h・℃) c:樹脂の比熱(kcal/kg・℃) ρ:樹脂の密度(kg/m3) ABS樹脂(ナチュラル材)のキャビティ表面温度50℃における α=0.0827(mm2/sec)タグ: