- ① オープンループとクローズドループ
- ② フィードバック制御の構成
- ③ 装置のサイクルタイムに関して
装置のサイクルタイムに関して
前項までで精密搬送制御の理論体系とハード構成の概要を説明しましたが、この項では、設備として重要な仕様である“サイクルタイム(C/T)”に関して、説明します。
FAシステムは、従来の作業者による手作業で生産していた部分を自動化することによる人件費の削減や製品の品質安定化の目的を持っています。
さらに、それだけに留まらず、コスト削減のため厳しいサイクルタイムを課せられることが常です。当然、生産サイクルが短縮されれば、その分だけ製造コストダウンに直結するためです。
上記が、FAライン用のメカトロ装置を開発する上で、機構設計、ハード(電気)設計、各種ソフトウェア設計にとって重要なファクターとなります。
例えば、サイクルタイム短縮上の問題点として、次のような項目が挙げられます。
- 制御時間の無駄
- ※位置決め静定時間が長い、各モーション間の受け渡し時間が長い、etc.
- 起動時間の無駄
- ※モーション・シーケンス立ち上がり時間が遅い、センシングによるトリガー応答が遅い、etc.
- 加減速時間の長さ
- ※S字加減速カーブ適用による加速・減速所要時間の延長、サーボ・チューニング未最適化、etc.
- チョコ停の存在
- ※本格的な故障ではなく、一時的なトラブルのために設備が停止したり、空転したりする状態であり、ワークを除去したり、セットし直したりすることによって設備は正常作動に復帰しますが、チョコ停の回数が多いと設備稼働率が低下し、コストに影響するようになります。
- 各種応答遅れ
- ※搬送ロボット~PLC間の通信パフォーマンスが低い、PLC(CPU)の処理能力が低い、etc.
構想設計段階で開発要件定義されている装置要求仕様に沿って、上述の問題点をどこまで完璧にクリアしていくかを検討することになります。(C/Tを最速にしようとすれば、使用する各種ハードも変わり、コストアップになります。)
以上、フィードバック制御、実構成例、そしてサイクルタイムと、簡単ですが精密搬送制御の基本となる内容です。
最後に、今回は「精密搬送編」という形で、3テーマにわたって紹介してきましたが、これからメカ設計者として極みを目指していく方々の参考になれば幸いです。