モールドデポジットとは、プラスチック射出成形金型の入れ子の隙間やキャビティの隅に付着する堆積物のことです。
デポジットが堆積しますと、成形品にショートショットが発生したり成形品の形状が正確に転写されなくなる不具合が発生します。
デポジットが発生する原因は、樹脂の中に含まれている化学成分が堆積したり、金型の表面に施した薬剤や油分が影響している場合が考えられます。
空気中の水分が入れ子の隙間に付着して微細箇所に錆のきっかけが発生し、そこにデポジットが堆積を始め、堆積が進行したりします。
樹脂から発生する「やに成分」や揮発性のガス成分は、金型が成形加工のために金型温度が高い場合には、堆積しにくいのですが、金型を成形機から降ろして金型温度が下がった場合には、ガス成分等が固化し、デポジットになったりもします。
デポジットは、金型の分解清掃によって定期的に除去をすれば、金型は長持ちします。金型を設計する際には、どのぐらいの頻度で金型の分解清掃を行うのが最適かを考慮しておくことが大切です。
また、デポジットを堆積しにくくするための金型構造を採用することも有効です。
たとえば、コアピンの周囲にガスベントを設けたり、エジェクタピンやランナーロックピンの周囲にガスを排出するための溝を工夫することが実用されています。
金型部品の材質をステンレス系の耐食鋼材を使用したり、硬質クロムめっきやPVD皮膜を施すことも効果があります。
真空吸引の装置を使って、ガス成分を強制的に排出する方法も使用される場合がありますが、金型の構造は特殊になってしまいます。
金型のメンテナンスでは、超音波洗浄や有機溶剤による脱脂などで、丁寧に付着成分を取り除きます。