金型は切れ刃の痛み(バリの増加)に伴って再研磨を行い、切れ刃を再生します。金型の再研磨の方法には、プレート全体を研磨する方法と、入れ子部品のみを研摩する方法があります。プレート全体を研磨する方法は、プレートはその都度薄くなっていきますが、ボタンダイ等の入れ子部品も同じレベルで変化するため特に問題はありません。入れ子のみを研摩する方法では、研磨分のレベル調整を必要とします。調整がうまくないと、プレート面に凹凸ができ、製品品質に影響します。そのため、【図1】に示すように、ボタンの調節が楽にできるようにしておきます。
(a)のつばなしのボタンダイでは、研磨分のスペーサを裏にしくことで対応できるので、特に大きな問題はありません。(b)のつば付きのボタンダイでは、つば上にスペーサを入れておく必要があります。再研磨を重ねることによってスペーサの数が増えてきますが、あまり多くなることはよくありません。スペーサは3〜4枚までとして、数が多くなったときには、スペーサの厚さを変えて枚数を増やさないようにします。
穴径(d)とボタンダイの高さ(L)との関係についてです。穴径に対してL寸法が長過ぎると、かす詰まりを起こしやすくなります。特に小径穴では問題を起こしやすいので、できるだけ短くすることがよいです。他の加工の関係から、プレートが厚くなり、穴径に対してボタンダイの長さが長くなってしまうことがあります。穴径に対してボタンダイ長さがバランス悪いと感じられる時には、【図2】に示すようにボタンダイの後ろにカラーを入れボタンダイの長さを調節するとよいでしょう。
ボタンダイを使用する穴抜きでは、穴形状がシンプルなことが多く、かす上がりしやすい傾向にあります。対策として、かす上がり防止ボタンダイがあります。その構造を示したものが【図3】です。
抜き加工では、直線や曲線形状の一部分のクリアランスが多少変化しても、加工には影響がありません。そして、穴加工形状はパンチ形状に、抜かれた形状はダイ形状と同じになります。 その原理を利用して作られたものが、かす上がり防止ボタンダイです。ダイの一部にクリアランスを広げ溝を作ります。その溝は傾斜させます。このような溝を複数作ります。抜き形状はダイ切れ刃形状になります。抜きかすは垂直に移動します。そうすると傾斜溝部分の凸形状は傾斜溝を乗り上げるような形状となり、ダイとの食い付きが増します。その食いつき力でかす上がりを止めます。しかし、SK材などの硬い材質や、極薄い材料に対しては効果が少ないです。