金属の腐食・防食
今回から、金属の腐食・防食について考えてみましょう。
金属は、空気中や水中・地中でよく腐食して漏水・ガス漏れ事故を起したり、公園の遊具などの構築物が倒壊して人身事故を起したりすることはよく知られています。
また、事故に至らなくても、宝飾品のネックレスなどが錆びたとか、マンションのステンレス製の手すりが錆びたなど、美観を悪化させる事件は枚挙にいとまがありません。
しかし、もともと金属は、鉱山の地中に化学的に安定な酸化物や硫化物の形で眠っていたものを採掘し、純度の高い金属に精錬したものですから、溶存酸素や塩素イオンの多い水中や、21容量%の酸素や湿度の多い空気中に長時間曝されると、もとの安定な形に戻ろうとするのは当然です。このようなことを防止し、初期の機能を維持するために合金化や、防食めっき・防食塗装が施されます。
(1)金属の活性系列
いま、各種金属の錆び易さ、錆びにくさを考えてみましょう。
金属と酸との反応を考えてみると、水素よりイオン化エネルギーの低い金属は、酸と反応して水素を発生します。そこで、金属を水素と関連させて、その活性の程度を順に並べたものを、金属の活性系列と呼びます。【表1】に示しました。
【表1】金属の活性系列
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表の上方にある金属は活性な(錆びやすい)金属で、酸と反応して水素を発生しますが、Cuより下方の金属では、酸化剤の存在するときしか反応せず、さらにPt以下では酸化剤があっても、酸と反応しません。
このように金属元素は、それぞれ異なったイオン化エネルギーをもっているので、錆びやすさ、錆びにくさに相違があるということが分かります。
しかし、実際の腐食現象はこの通りにはいきません。それは、金属の置かれた環境によって腐食現象は異なるということです。
例えば、金属が初期の腐食によってその表面に酸化物が生じ、その酸化物皮膜が、金属と環境を遮断するような緻密で化学的に安定なものであれば、腐食はそれ以上進行しないことになるからです。
このように腐食現象は、環境の影響を強く受けますので、環境を抜きにした腐食論議は全く意義をもちません。