パイロットは【図1】(a)に示すように、金型内にある材料の最終的な位置決めをします。金型内には、送り装置や人の手などで材料は送り込まれますが、ある程度の誤差が常につきまといます。その誤差を、製品に影響ないところまで修正することを求められます。材料の位置の修正は、パイロットの傾斜面で材料を滑らせて移動します。斜面の形には(b)に示す砲弾形と(c)に示すテーパ形があります。砲弾形は上下移動量に対して横移動量が変化します。テーパ形では常に一定した移動量となります。以前は精密な加工にはテーパ形が良いと言われたこともありましたが、現在ではあまり区別していません。精密ものや薄い板厚および軟質材のものでは、上下運動に対して横移動量を小さくとり、板厚が増すにつれて横移動量を大きくとる傾向にあります。材料が滑る斜面はきれいに仕上げ、滑り抵抗を減らすようにします。
通常、パイロットはパイロット用の穴に挿入しますが、【図2】(a)に示すパイロット径と穴の関係に注意が必要です。(b)に示す「ゆるみ」が小さい程位置決め精度は良くなりますが、仕事が終わってパイロットが材料から抜けていく段階でゆるみがないと、材料を吊り上げてしまうことになります。位置決め精度と吊り上げトラブルとのかねあいを考えて、パイロット径と穴の関係を決めます。精密な場合でも、ゆるみ(径の差)は0.01mm程度、一般的(板厚1mm前後)には0.02〜0.04mm程度です。ゆるみは誤差となって現れますが、金型内のパイロットの資料数が多いと相互に干渉して精度は上がります。ただし多すぎると干渉がきつくなり、材料吊り上げの原因となります。
パイロットは加工に先行して働かなければなりません。そのために可動ストリッパ構造ではストリッパ面から突き出る形になります。突き出ている長さが長過ぎると、やはり材料吊り上げの原因となります。【図3】(a)を参照して下さい。突き出し量は加工する材料板厚を考慮して決めますが、できるだけ短くすることが好ましいです。以下のように考えます。パイロットが入る穴の抜き面は、「だれ−せん断面−破断面」で構成されています。信頼のおける面はせん断面です。せん断面部分にパイロットが働けば、機能は達成します。材料の板厚保がある程度あれば、(b)に示すようにパイロットの突き出し量を短くしても問題は起きません。しかし、材料板厚が薄くなると、(b)のような形にしようとすると、パイロットの部品精度をかなり高めないと失敗します。そんなわけで(c)に示すように、材料板厚より突き出し量を長くします。長くすることでパイロットの加工精度をラフにするための処置です。突き出し量が長過ぎても材料吊り上げの原因になりますから、兼ね合いが必要です。