順送加工では、材料を少しダイ面から持ち上げて材料を移動させます。材料をダイ面から持ち上げることを「リフトアップ」と呼びます。上型に設けられたパイロットは下降して、リフトアップ状態にある材料にパイロットを入れます。材料の厚さがあれば、その強さで変形せずにパイロットは材料に入ることができます。しかし、ガイドリフターとパイロット穴位置が遠く離れると不安定になるので、パイロット穴位置とガイドリフターの位置関係はできるだけ接近させ、材料変形が少なくなるようにします。材料が薄くなると、ガイドリフターを接近させても、【図1】(a)に示すようにパイロットに押され材料は変形してしまいます。このようになると、穴にパイロットがうまく入らないので加工ミスとなります。仮に、うまく入ったときでも【図1】(b)に示すように、加工後の戻り工程で材料をパイロットで吊り上げてしまい、やはり加工ミスとなることが多くなります。
このような問題の基本対策として、パイロットの面をよく磨いて接触抵抗を少なくすることがあります。根本対策としては、弱い部分を補強することです。その具体例が【図2】です。
【図2】(a)は、上から押されるのだから下から受ければよい、という発想のものです。リフトアップ部品としてはリフターがあります。通常のリフターは持ち上げることを機能としていますが、リフターに穴をあけ、パイロットの先端が入るようにすることで、パイロットの下でリフターが使えるようになり、材料がたわむことなく保持されるので、安定した形でパイロットすることができるようになります。このようなリフターを「パイロット下穴付きリフター」と呼びます。
【図2】(b)は、戻り工程での吊り上げ防止対策です。ストリッパ内にパイロットガイドを入れます。このガイドはスプリングで保持されています。通常のパイロットは、ストリッパ面からストレート部分が出ていなければなりません。この部分で位置決めをしますが、この部分で材料を吊り上げることもします。ストリッパに組み込んだパイロットガイドは可動式(スプリング保持)にして、ガイドの先端をパイロット先端のガイド部まで下げます。
このようにすることで、材料の吊り上げを防ぎます。ガイドがパイロット先端まで下がっていると、パイロットが穴に入るときに困ります。したがって、パイロットガイドを保持するスプリングは、極力弱くします。この形と、先に示したパイロット下穴付きリフターを併用すると完璧です。
パイロットは、使う状況に合わせて周辺条件を変えることも必要です。