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Vol.08
2010年5月11日号
マーケティングセミナー

横田先生の世界金型産業講座
変貌し始めた「金型産業」

 日本の金型工業会は「金型」そのものを製造して販売する所謂「金型専業者」が中心の金型業者の集まりであることに関しては、以前この講座で説明させていただいたので覚えていらっしゃる人も多いかと思います。最近になって、その日本の金型専業者を主体とした金型産業が「衰退しつつある」と多くのマスコミが取り上げ、日本の製造業の危機であると言い始めました。確かに、もし日本から「金型製造者」が居なくなったらほとんどの日本の“モノづくり産業”は世界での競争に負け、日本では“モノづくり”が出来なくなってしまうことは確実でしょう。
 それでは、日本にとって大切なその金型産業を今後も存続させるにはどうしたら良いでしょうか。様々な案が“評論家”や“エコノミスト”の皆様から提案されていますが、「中国やインドといった急成長する海外市場に積極的に進出して新しい市場開拓を図る」とか「最新設備を導入して効率化を図る」とか「新技術開発を促進して世界に負けない技術の確立を図る」という内容ばかりで、現場に近い私から見ると、どれも中小企業が中心の日本の金型産業では対応できない “非現実的”な話のような気がします。それより今、日本が考えなければならないのは、“モノづくりとは何か?”という「原点」に戻って考えることではないでしょうか?

 

「金型産業」の定義

 元々、日本で言う「金型産業」という定義は世界にはありません。世界での金型産業の定義は金型のみならず、冶工具・ゲージ等を含んだ特殊品製造産業なのです。「金型」は英語では“Die and Mould”と表されていますが、世界の金型工業会の名称に日本のような“Die and Mould”の表記がなされている国はアジア諸国の一部を除いて全くありません。そのアジア地域でもインドネシア金型工業会は“Indonesia Mold and Dies Industry Association”と表記されてはいますが、工業会の内容は日本と全く違います。昭和30年代、日本の金型工業会の設立時は日本国内の金型産業が弱体で、顧客である大手企業と立ち向かい金型企業に有利な条件を引き出すために金型産業は団体として纏まる必要がありました。そのため自動車メーカや電気・電子メーカのような金型顧客はもとより工作機械産業、材料産業、金型関連商社のような関連企業も「正会員」としての参加はありませんでした。しかしながら、インドネシア金型工業会の会員は最終顧客である大手セットメーカばかりでなく、金型に関連する全ての企業が「正会員」として参加しています。日本の金型工業会の定義で言えば、敵味方が協力し合う”呉越同舟“状態の工業会です。この傾向はインドネシアの金型産業に限ったことではありません。アジア諸国中、いや世界中にその傾向が広がっています。では、どうしてそうなったのか?を考えてみましょう。

 

世界の金型産業における共通した悩み

 最近の世界の金型を製造販売する金型専業者である金型企業の共通した問題は、「儲からない」「後継者がいない」という日本の抱えている課題と全く同じです。最終消費者価格を下げるには構成する部品価格を下げなければなりません。その部品価格を下げるには金型価格を下げるしかありません。しかし、金型価格を下げるには材料価格を下げることは出来ませんので、利益を犠牲にし、加えて人件費を削るしかありません。それが「儲からない」「後継者がいない」に繋がります。

一方、大手セットメーカや部品メーカは生き残りをかけた「グローバル展開」を図っています。そのためには金型も現地調達しなければなりませんが、先進諸国並みの品質を持った金型を現地調達することは事実上不可能です。一方価格が多少高いのは無視して日本から調達しても、現地では高品質金型のメンテナンスが出来ない問題が生じます。又、現地企業も前述したような「儲からない」事業に投資はしませんので直ぐには金型企業は育たないでしょう。
 そのためセットメーカや部品メーカは当面の間は、現地金型企業を育てたり捜したりするよりも、自社内で金型を製造する施策を取る傾向にあります。つまりそれら企業は「金型企業」でもあり「最終製品製造企業」や「部品企業」でもあるわけですから、日本のように「金型工業会=金型専業者の集まり」の定義をすることが出来ないのです。この金型を社内で製造する「内製金型製造」には利点も欠点もあります。欠点は“お客様に購入して頂く”ための品質向上やコストダウンが積極的に行われず、社内での“なあなあ取引”が通常化する点です。利点は、機密条項が守られることに起因して“本音の意思疎通”がしやすい点、使用しなくなった在庫金型を修正加工することによる新型製造が可能な点、メンテナンスが素早くできる点、金型技術開発の方向が決められる点、金型技術者・技能者の養成がしやすい点等々多く存在します。加えて、金型製造は特殊品製造ですから様々な工作機械や精密検査装置等の設備も豊富に揃える必要があります。そのため、その金型製造部門で冶工具やゲージばかりでなく特殊機械の製造まで様々な装置を製造することが社内で可能になります。それがアジアの金型産業の姿なのです。このようなアジアの新興国の動きは金型先進国にとっても新しい金型産業の生き方かもしれません。

 

日本の金型産業が学ぶこと

 日本では今、金型企業が金型販売だけではなく自社で作った金型を使った「部品製造販売」に転換しつつあります。日本国内ではこれが“新しい事業展開”として捉えられていますが、前述したようにアジア地域では以前からあった当たり前の事業展開です。そう考えると今の日本の金型産業も“先達”であるアジア地域の金型産業に学ぶべきところが多くあるのではないでしょうか。社内用金型製造はどうあるべきか?社内製造だから出来る部品の共通化はどうしたら良いか?製造個数が少ない金型の設計は?等々数え上げればきりがありません。日本の金型企業が今までに無かった新たな勉強をする内容は多くあります。日本の金型企業は豊富な設備や優れた技能をすでに持っています。それを利用すれば出来ないことは何もありません。
 金型の品質を高める目的は部品の品質を高めるためにあるのは当たり前のことです。部品も同一企業で作ることが、ひいては「金型の品質をどのようにしたらよいか?」の研究に繋がり“真の金型開発技術研究”の方向性が決められるのではないかと思っています。日本の金型産業は今「変貌の時」を迎えています。
 次回から少しずつ海外の金型企業が今何を考えているかを説明したいと思っています。



横田悦二郎[ヨコタエツジロウ]先生のご紹介:

経歴/昭和43年黒田精工株式会社に入社後、平成17年4月に ファインクロダ株式会社代表取締役社長に就任。現在では、アジア金型工業会 名誉会長、日本金型工業会顧問や国際金型協会(ISTMA)、NPO法人「アジア金型産業フォーラム」副理事長などの要職をも務める。また、著書/連載記事として「世界に勝つモノづくり 金型ジャパンブランド宣言」や「本気でJAPANものづくり戦略」の執筆者としても著名。

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