ここまでの内容で、チラーは、機器をはじめとする対象物の温度管理が必要な場面において、欠かせない設備であることがわかりました。
しかし、重要性の高い設備であるからこそ、どれを選ぶべきか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで、以下では現場に最適なチラーを選ぶために押さえておきたいポイントをお伝えします。
本記事でご紹介した、おすすめのチラー一覧と照らし合わせながらご覧ください。
循環水の温度を決める
まずは、チラーで冷却する対象物の最適温度から、チラーで使う循環水の温度を決めます。
工作機械などの機器を冷却する場合は、機器ごとに“最適温度”とされるものがありますので、その最適温度に設定が可能なチラーを選びましょう。
機器の冷却以外の用途を想定している場合は、「どの程度まで冷やせばよいのか」を考えます。
たとえば、一般的な冷蔵庫でも対応できる範囲、あるいは保冷の用途を想定しているのであれば、そこまで大規模なものを選ばなくとも十分な可能性があります。
そうではなく、一定の基準以上の冷却性能を求めるのであれば、氷点下まで冷却できるチラーを選ぶとよいでしょう。
冷却方法【空冷・水冷】、設置場所【屋外・屋内】を決める
循環水の温度が決まったら、続いて冷却方法およびチラーの設置場所を決めます。
先述の通り、チラーには空冷式と水冷式が存在しますが、両者の違いは冷却方法だけではありません。
具体的には、以下の要素が異なります。
空冷式チラーと水冷式チラーの違い
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冷却効率 |
冷却水 |
室内の排熱 |
設置スペース |
| 空冷式 |
低い |
不要 |
発生する |
配管を設置するためのスペースが必要 |
| 水冷式 |
高い |
必要 |
発生しない |
比較的狭い空間でも設置できる |
また、屋外・屋内どちらでの使用を想定しているのか? も明確にしましょう。
以下の条件をご参考ください。
チラーの設置場所の判断基準
|
屋外 |
屋内 |
| 向いている条件 |
- ●屋内への排熱を避けたい
- ●屋内に気流が発生するのを避けたい
- ●チラーを設置するスペースが屋内にない
- ●冷却水の供給設備が屋内にない
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- ●設備の近くでチラーを操作できるように配置したい
- ●配管を短くしたい
- ●設置工数を減らしてスムーズに導入したい
|
上記の条件を整理することで、導入すべきチラーの種類を絞り込むことができます。
冷却能力を決める
現場にとって必要なチラーの冷却能力を明確にすることは、チラーを選ぶにあたってもっとも重要な工程と言っても過言ではありません。
対象物から発せられる熱負荷に対し、十分な冷却能力のあるチラーを選ぶ必要があります。
そのためには、以下の計算式を用いて、チラーの必要冷却能力を算出しましょう。
必要冷却能力の求め方(計算式)
対象物を、何度の状態から何度にまで、どの程度の時間で冷却したいのか? を明確にしたうえで、まず以下の数式で負荷容量(Q)を算出します。
Q=Vs×Cs×γs×(Tb-Ta)t
- ●Q:負荷容量(kW)
- ●t:対象物の冷却に必要な時間(sec)
- ●Vs : 対象物の体積(m³)
- ●Cs : 対象物の比熱(KJ/g・℃)
- ●γs : 対象物の密度(g/cm³) ※水の場合は1
- ●Tb : 対象物の冷却前の温度(℃)
- ●Ta : 対象物の冷却後の温度(℃)
上記の数式によってQの数値が明確になったら、それに20%の安全率を見込んで、1.2を掛けます。
そうすると負荷容量の数値が明確になるので、その数値よりも大きな冷却能力をもつチラーを選定しましょう。
配管抵抗を確認する
続いて、チラーを設置した場合の配管抵抗を求めます。
チラーのスペックよりも抵抗が大きくなると、水の循環量が減少し、それに伴い冷却能力も落ちてしまうためです。
製品によっては安全装置が作動して、チラーの動作が止まってしまう可能性もあるので、あらかじめ配管抵抗を確認のうえ、それに対応した製品を選びましょう。
配管抵抗の求め方(計算式)
チラーの配管抵抗は、以下の計算式で求められます。
Hm=ha+hv+hf+kt<HL
- ●Hm:配管抵抗
- ●ha:水面からクーラーまでの高低差(m)
- ●hv:吐出口から出る水の抵抗(m)※通常は0.5~0.8
- ●hf:管内の水の抵抗(m)
- ●ht:曲管部分の抵抗(m)
- ●HL:限界揚程
ポンプの能力を決める
最後に、以下の手順に沿って必要なポンプの能力(揚程)を求めます。
チラーのポンプ能力の求め方
- 1.チラーから装置までの配管の長さ(配管長)を求める
- 2.継手の抵抗を直管の長さに変換し、1.に加える
- 3.循環水の流量と配管径から“損失水頭”を算出し、2.にかける
- 4.チラーから装置までの高さを3.に加え、揚程を求める
2.について、90°の継手を使う場合の直管相当長を以下にまとめました。
メーカー・製品ごとに詳細は異なりますので、あくまでも目安としてご参考ください。
90°の継手の直管相当長早見表
|
継手の形状 |
管径 ※上段:B・下段:A(mm) |
| 1.6 |
2.0 |
2.3 |
2.6 |
2.9 |
| 0.5 |
0.6 |
0.7 |
0.9 |
1.1 |
| ショートエルボ |
ねじ |
1.6 |
2.0 |
2.3 |
2.6 |
2.9 |
| フランジ |
0.5 |
0.6 |
0.7 |
0.9 |
1.1 |
| ロングエルボ |
ねじ |
0.8 |
1.0 |
1.0 |
1.1 |
1.1 |
| フランジ |
0.5 |
0.6 |
0.7 |
0.8 |
0.9 |
上記手順をもとに、想定されているシチュエーションでの揚程を求めましょう。
この条件を満たすチラーを選べば基本的には問題ありません。