支援団体インタビュー

2013年度

サレジオ工業高等専門学校

機械電子工学科学科プロジェクト

【インタビューに答えてくれた方々】

岩下 真輝さん (機械電子工学科3年, リーダー)
小山 輝さん (機械電子工学科3年, シャシー製作担当)
中村 航太さん (機械電子工学科3年, 搭載回路製作担当)
福井 直生さん (機械電子工学科3年, 外装製作担当)

サレジオ工業高等専門学校 機械電子工学科学科プロジェクト

チーム紹介・マシンの特徴

岩下真輝さん
岩下真輝さん

ミスミ:リーダーの岩下さん、まずはチームの紹介をお願いします。
岩下さん:僕たちは、機械電子工学科の学科プロジェクトで集まった有志メンバーで浜松のソーラーバイクレースに参加しています。現在は3年生から5年生まで10人で活動しています。この大会は、毎年9月ごろに浜松のオートレース場で開催されています。オーバルの指定されたコースを走行し続け走行距離を競う「6時間耐久レース」、コースを8周走行した完走タイムを競う「スプリントレース」、マシンを使ったパフォーマンスを競う「フリースタイル競技」があります。今年の大会では、フリースタイル1位、スプリントレース2位、総合3位に入賞することができました。

ミスミ:役割分担を教えてください。
岩下さん:マシンの基本アイディアは全員で考えます。仮設タイヤやハンドル、椅子等を床に配置する事により乗車スペース等をリアル空間で考えます。各要素の配置がおおよそ決まった後、全体イメージをラフ図に起こします。図面完成後、マシンのフレームを製作するチームと、回路を製作するチームに分かれます。マシンのフレームを製作するチームは、図面に合わせて曲げ加工や溶接等を行います。回路を製作するチームは、バイクに搭載する保安装置やモータの駆動回路等の設計・製作をします。僕たちは、既製品を極力使わずにディスクリートで回路製作に取り組んでいます。回路を組む中で自分たちも回路の勉強をしています。分担作業ではありますが、担当作業が終わった後は、遅れている作業を支援します。作業場所は実験室や工作室で隣り合わせなので、他の作業チームの様子を見ることができ、作業の進捗状況の把握が直ぐにできます。

ミスミ:マシンの特徴を教えて下さい。
岩下さん:僕たちの学校では、過去にも先輩たちがソーラーバイクレースに参加しています。製作するマシンの形を今年のメンバーで話しあい「今までの大会に出場していたマシンとは違ったものをつくろう」ということになりました。今まではトライクがほとんどだったので、製作経験が無い「サイドカー」を作ることにしました。サイドカーがあると隣に相棒を乗せられますから (笑) 。メイン車両は、メンバーの使わなくなった自転車のフレームを再利用しました。サイドカーは、鉄パイプを曲げ加工して部材を製作、アーク溶接で車体と接合しました。パイプ曲げは、パイプベンダーだけではなく、自転車のリムを型にして曲げました。電圧計と電流計は、走行中のバッテリや発電状況の監視のため、見やすい位置に取り付けました。

前回大会への取り組み

ミスミ:前回の大会で工夫した点を教えてください。また苦労した点はありましたか?
岩下さん:先輩たちから過去の大会の状況を聞き、取り組むべき内容を整理しました。
最初に取り組んだのは、部品の配置箇所の見直しです。電池交換するためのピットインタイムを短くするために、バッテリを取り出しやすい位置に配置しました。バッテリを置く位置もドライバーの下ではなく、サイドカーの椅子の下にしました。座面を開閉するだけでバッテリ交換が可能になり、電池交換がとても楽になりました。又、配線はコネクタ式にして、取替え作業を素早くできるようにしました。
また、マシンの総重量を軽くするために今まで使用していた鉛蓄電池から軽量でエネルギー密度の高いリチウムイオン電池に変えました。かなり軽量化できました!電池の充電にも気を使いました。ソーラーで発電したエネルギーしか使えないので、効率よく充電することが必要です。僕らは、リチウムイオン電池を使っているので競技ルール上、同じ容量のバッテリーパックを4セット使っています。この4セットのバッテリーパックを1セットはマシンに乗せて、残り3セットを充電に回します。天候にもよりますが、天気が良いとソーラーパネルがものすごく熱くなって発電量が低下してしまうので、散水して冷やしました。充電に関しては、MPPTをつないで最大電力で充電できるようにしました。MPPTを含めた充電セットは、充電用の電圧・電流メータを付けたのでテスター無しで現状把握をすることができます。ここでもマシンと同じコネクタ接続にしているので取替は簡単です。コネクタにしておけば、焦っているときにプラスマイナスの極性を間違えることもありません。
走行では、今回使ったインホイールモータの消費電力は、結構大きなものだったため、バッテリ-消費を抑える事に苦労しました。耐久レースでは2時間走行後に休憩に入るため、常にバッテリ残量を気にして走行しました。事前の試運転で走行に必要な消費電力を把握していましたが、レース場のコースは、直線とスラローム走行が組み合わされたオーバルコースなので、速度の上げ下げが必要になり、想像以上の電力消費が予想されました。
レース時には、楽しさのあまり調子にのって気持ちよく加速すると、あっという間にバイクの電流計の針が上がってしまうので、ゆっくり加速するようにしました。マシンのバッテリ-残量は無線でピットに知らせて先生とも相談しながら走行時の電流を制御しました。
大会後は、地域のお祭り等で子供たちを乗せて遊べるようなサイドカーを作りました。子供は運転はできなくても、サイドカーに乗せて走るだけでも結構喜んでくれます。

小山輝さん
小山輝さん

ミスミ:小山さんはいかがですか?
小山さん:僕はフレーム製作を担当しました。フレーム製作で苦労した点は、ベースとなる自転車とサイドカーをくっつける所です。
初めて溶接をしたので最初はかなり手こずりましたが、先輩や先生に教えてもらいながらできるようになりました。自転車とサイドカーは溶接によって取り付けたのですが、ちゃんと取り付けなければいろいろと不良が起きてしまいます。最悪真っ二つになんてことも……。とにかく頑丈に、でも重くならないような設計に苦労しました。
特に工夫した点は、乗りやすさです。ベースとなる自転車のサスペンションを活かしました。また、車高を下げて重心を低くするために椅子の取り付け部材を切断してデフォルトより15cmほど低い位置に溶接し直しました。重心が下がったことでカーブの走破性が良くなりました。

中村航太さん
中村航太さん

ミスミ:中村さんはいかがですか?
中村さん:回路製作を担当しました。基板の製作には特に拘りました。複数の基板を設置しながら、ジャンパ線を少なくするために、小さな基板を製作しました。小さな基板の製作には苦労しましたが、美しい基板が製作できました!
試作時、初めて作った回路がなかなか思うように動いてくれず苦労しました。僕の回路が動かないとフレームができてても大会に出場できないのでプレッシャーは大きかったです。焦っても仕方がないんですが、動かないときは焦りましたね。メンバーからの視線が痛くて……。

福井直生さん
福井直生さん

ミスミ:福井さんはいかがですか?
福井さん:僕は外装の製作を担当しました。
工夫したところは、サイドカーが綺麗な曲線で作られていたので、それに合わせて外装を曲げなければならないことです。僕が上手く作らないと綺麗にパイプを曲げて作ってくれた小山くんに怒られます(苦笑) 。 そこで、軽い素材で柔軟性がある塩化ビニ-ル板やプラスチックダンボールなどを曲げて張り付けて製作しました。
苦労したところは、中村くんの回路の配線がたくさんフレームに這っていたので、それが外装に当たらないように外装を固定したことです。本当はFRPで作りたかったのですが、時間的に難しかったので来年はやりたいです。

ミスミ:前回の大会は統括するとどのような大会でしたか?
岩下さん:今回の大会では、マシントラブルが少なく、大会で好成績を残すことができました。三輪部門に出場し、フリースタイル競技で1位、スプリントレースで2位、総合3位入賞です。これは、過去に先輩が参戦した大会結果と比較しても一番良い成績で嬉しかったです。
小山くんが製作してくれたフレームは、走行時にも剛性が保たれていたので安心して走行することができました。中村くんの回路も多少のトラブルはありましたが、最後まで走りきることができました。福井くんの外装がかなり軽かったので予想よりも総重量が低く抑えられました。
やはり大会の会場と学校では緊張感が違います。本番に強くなった気がします。僕らにとって一番大きな成長は、授業でやらないことをたくさん学べたことです。例えば、授業では先生が配布したプリントなどを見ながら問題を解いたり製作したりしますが、今回の大会参戦では、授業のような道筋はありません。先生の支援を受けながら、自分達で製作できるものを設計する必要があります。資材の調達、加工、試走、改善の一連の活動には、アイディア発想からスケジュール管理、メンバーの意思疎通など、総合力が問われます。
当初は「車を作ってみたいな~」という漠然とした想いで集まったメンバーですが、今年度の活動を通じて大きく成長できたと思います。まだまだですけど……。今後は、今回の体験をスタートラインとして、もっと成長したいと考えています。また、僕たちが先輩に支えてもらったように今後は僕たちが後輩を支援していきたいです。支援する立場は、きっと自分たちが初めてやる立場とは違った難しさがあると思います。でもそれも人生勉強だと思います。
最後に僕らメインメンバー以外に製作を支援してくれたメンバーや先生方、みんなにとても感謝しています。ありがとうございました!

フレームに使うパイプを曲げているところ
フレームに使うパイプを
曲げているところ

フレームを溶接で組み立てているところ
フレームを溶接で
組み立てているところ

ソーラーバイク 3D
ソーラーバイク 3D

今後の目標

ミスミ:最後に、今後の目標について教えてください。
岩下さん:今後は、今回製作したメンバーと共に来年製作する後輩たちの指導をしていきます。自分たちのマシンについては、もっと上位を目指して今年のマシンも改造して、来年もう一度出場したいと思っています。その時はもっといい成績を残したいです。そのためには、現状の走行データを詳しく分析してエネルギー収支バランスの検討をもっとやらないといけないと思います。マシンのみならず、ドライバーの省エネ運転に対する訓練も必要です。
上位を目指すと同時に、自分たちが作って良かったと思えるマシンにするのが一番だと思います。遊び心って重要じゃないですか (笑) 。きっと僕らが楽しくやっている姿を見れば、後輩たちも元気に活動してくれると思います。後輩と一緒に作業をする中で、モノづくりの大切さや素晴らしさ、できたときの達成感と感動を共有できればいいなと考えています。そうすれば、みんなで何かを作ることの楽しさが伝わると思います。