支援団体インタビュー

2013年度

八戸工業高等専門学校

自動車工学部

【インタビューに答えてくれた方々】

中田 匠さん(機械工学科5年、2013年10月の全国大会まで部長、ドライバー,カウル担当)
佐藤 紀吏友さん(電気情報工学科3年、マネージャー、ドライバー、エンジン・電装系統担当)
中里 亮太さん(機械工学科2年、部長、エンジン担当)

八戸工業高等専門学校 自動車工学部

チーム紹介・マシンの特徴

ミスミ:中田さん、まずはチームの紹介をお願いします。
中田さん:自動車工学部は、1リットルのガソリンでどのくらいの距離を走ることができるのかを競う「エコラン」に出場することを目的とした部活です。
専用の競技車両を設計・製作し、実車走行練習等を繰り返した上で、年1回、Hondaエコマイレッジチャレンジ全国大会に参加しています。
メンバーは10名で、機械工学科の学生が中心です。チーム最高燃費記録は2012年度の大会で出した1747km/Lで、現在は夢として掲げてきた2000km/Lを突破すべく活動に励んでいます。

ミスミ:役割分担を教えてください。
中田さん:担当はエンジン、シャシ、カウル、電装の4分野に大別されます。各部員はいずれかの分野を主担当とするほか、副担当を持っている部員もいます。

ミスミ:マシンの特徴を教えて下さい。
中田さん:本校チームのマシンの特徴は、それが良いことなのかどうかは別にして、大幅に電子制御化されていることです。
これは、ドライバーを複雑な操作から解放して、安全に運転してもらえるようにとの目的から導入したものですが、各種アクチュエータが毎回ほぼ同様の動作をすることになるため、走行練習や台上試験での燃費データの再現性も飛躍的に向上させることができ、セッティングを煮詰めていく上でも大きな助けとなっています。
私は2年次からドライバーを務めていますが、電子制御化されているおかげで、大会時の運転中はハンドル操作やペース配分に集中することができました。

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前回大会への取り組み

ミスミ:前回の大会で工夫した点を教えて下さい。又苦労した点はありましたか?
中田さん:大会では3年ぶりとなる新型車両NP号Ⅲをデビューさせました。新開発した最大の目的は転がり抵抗の低減で、まず前後輪のハブを自作化しました。また、従来型車両では、足まわりの微小なガタ(遊び)が問題となっていましたので、ガタを追放すべく細心の注意を払って設計製作しました。
エコランに限らず、ものづくりの競技会では、ポテンシャルの高いマシンを設計製作することはとても重要です。しかしエコランでは、しっかり調整や整備を行わないと、そのポテンシャルを発揮させることはできません。そこで4月から実車走行練習を繰り返してきましたが、今年のメンバーは1、2年生が中心でしたので、整備不良に起因するトラブルが多発して苦難の道を歩みましたが、何とか大会直前の9月末までには約8%の燃費記録向上が見込まれるところにまでもっていくことができました。
10月上旬に行われた大会の初日は練習走行です。前日から降っていた雨はスタート前には止んで、路面も乾いたところで走ることができました。ところが、バックストレートでの惰性走行が昨年度に比べると大幅に悪化していました。原因は風向きと思われますが、そのために走行パターンの修正を余儀なくされ、燃料消費量も多くなってしまいました。2日目の決勝当日も、いつ雨が降りだすのかわからない空模様の中、雨が降りませんように・・・走行中トラブルが起こりませんように・・・と祈りながら走り出しました。前日よりはバックストレートでの惰性走行は改善されていたのですが、昨年度には遠く及ばないままで、この日も走行パータンを細かく変えながらゴールを目ざすことになりました。
燃費記録は昨年度出したチーム記録に僅かに届きませんでしたが、それでも順位はグループⅢ(大学・短大・高専・専門学校クラス)で3位だったので、本校チームとしては初めて表彰台に上ることができました。

ミスミ:佐藤さんは如何ですか?
佐藤さん:今年度は、電子制御回路のディスプレイをグラフィック式に換装して、ドライバーが時々刻々走行パターンを確認できるように改めました。ドライバーとしては初出場だった私ですが、走行パターンをどのように微調整するのかを判断していく上で、この改良は大きな助けとなってくれ、比較的安定した走行ができました。
ただしこうした反面で、長年改良を続けながら使ってきた回路の接触不良によるトラブルが頻発しました。原因は、エンジンの振動によって、回路素子を接合するはんだに微小なひび割れが生じていたことにありました。ルーペで丁寧に調べていかないと箇所を特定することができず、大変苦労しましたが、この振動の対策も電装系統の開発をしていく上で重要なことだと痛感しました。

ミスミ:中里さんは如何ですか?
中里さん:エコランカーにとって、エンジンは燃費を左右する最も重要な部分です。その、心臓部ともいえる場所を2013年春から担当することになりました。
春の段階では、全くと言っていいほどエンジンに触った経験がなかったので正直不安しかありませんでしたが、卒業した先輩が残してくれた「整備マニュアル」を頼りに、日々少しずつ整備のノウハウを身に付けていきました。また、できる範囲内でささやかながら改良も試みました。とはいうものの、自分の整備ミスにより引き起こったトラブルは決して少なくはありませんでした。新車デビューの年ということもあり、かなりのプレッシャーと焦りを感じていました。
そんな時に、そのような気持ちを軽減させてくれたのが部内の雰囲気の良さでした。部員のほとんどが低学年だったので、足回りの部署も整備力が足りていなかったですが、その分をチーム力で補っていました。若さ故の気合いと体力で困難を乗り越えましたね(笑)
そんなこんなでいろいろありましたが、無事に2台とも完走させて2013年度大会を終えることができました。結果は2012年度大会のチーム記録を超えられなかったのですが、部員ひとりひとりにそれぞれ課題が見えているので、2014年度大会までにそれらをしっかりと克服して、チーム記録を更新したいです。

ミスミ:前回の大会は統括するとどのような大会でしたか?
中田さん:まず、4月に新しい体制で活動がスタートした時は、新入部員を確保しなければ部の存続そのものが危ぶまれるところから始まりました。しかも大会経験者が自分を合わせて2人だったので、正直なところ当初は不安でした。
例年以上に勧誘に気合を入れたのが良かったのか、たくさん新入部員が入ってくれました。そこからは2、3年生が1年生に熱心に指導を行って、1年生もそれについてきてくれたので少しずつ整備の技術も上がってきました。
部内の雰囲気も良くて、地元で練習走行をしていてもチームワークがとても良かったです。実際に大会に行った時もしっかりと動けていたので安心しました。新型車両の製作から大会デビューまで、決して順風満帆ではなかったと思いますが、4月に部の存続の危機に直面していたことを考えれば、大会で結果を出せたのは良かったと思います。
そして大会で結果を出せたのは、やはり低学年の頑張りがあったからだと思います。彼らは若いチームでもこれだけやれるんだということを見せてくれました。チーム記録を更新することはできなかったのですが、低学年の活躍に今後の期待を感じさせる大会でした。

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今後の目標

ミスミ:最後に、今後の目標について教えてください。
中田さん:私達自動車工学部には、先輩から後輩へと技術をしっかりと伝承するという伝統があります。
膨大な設計図面、エンジン・シャシの整備、カウル、電子制御回路の製作技術、機械加工・・・これらは先輩方から代々受け継がれてきたものです。自動車工学部が1993年に初めて大会に参加して以来、現在に至るまで記録を伸ばしてこれたのは、先輩方が築き上げてきた技術を伝承してきたからだと思います。
実際は引き継ぎ直後の4月から6月あたりまでは、新しい担当者がすごく大変な思いをすることになるのですが・・・それもまたメンバーを成長させているのだと思います。そして、そんな私達の現在の目標は2000km/Lで、すでに目標に向けた改良は始まっています。そう簡単に達成できるような記録ではないと思いますが、少しずつでも地道に改良を積み重ねていけばきっと達成できると考えています。
活動を支えてくださる多くの方々に感謝しつつ、これからもエコランを続けていきたいです。

ミスミ:この度はインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。