支援団体インタビュー

2013年度

工学院大学

ソーラーカープロジェクト

【インタビューに答えてくれた方々】

齋藤 翔さん(大学院 機械工学専攻 1年、チームリーダー)
坂井 聡美さん(大学院 機械工学専攻 2年、メカニック)
稲葉 亮太さん(大学院 機械工学専攻 1年、広報部長)
池田 賢司さん(大学院 機械工学専攻 2年、エレクトロニクス)
長澤 拓さん(大学院 機械工学専攻 2年 ドライバ、メカニック)
渡邉 涼介さん(大学院 機械工学専攻 2年 ドライバ、メカニック)

工学院大学 ソーラーカープロジェクト

チーム紹介・マシンの特徴

ミスミ:リーダの斉藤さん、まずはチームの紹介をお願いします。
斉藤さん:世界最高峰のソーラーカーレース、Bridgestone World Solar Challenge 2013に初出場しました。23か国からの40チームが、オーストラリア大陸のダーウィンからアデレイドまでの3022kmを縦断します。本チームは過酷な環境に耐えられるだけではなく、低重心の新コンセプトで参戦しました。
チームは5年前に設立して新コンセプト車両を発表して、2012年World Green Challenge(秋田県大潟村)にて、ソーラーカー部門優勝とクラス優勝をしています。
大学として新しいイノベーションへのチャレンジをすることをビジョンに掲げて活動をしています。

世界大会へ出場した新車両(車両名:PRACTICE)

ミスミ:役割分担を教えて下さい。
斉藤さん:チームは、機械班、電気班、データ戦略班、ドライバ班、広報班、企画班の6つのグループに分かれます。さらに、それぞれのグループを統括する学生リーダが総責任者です。学生35名の団体です。

ミスミ:マシンの特徴を教えて下さい。
斉藤さん:第一回世界大会が開催されたのは、26年前です。26年前にGM(ジェネラルモータズ社)が薄型・高重心のマシンを提案して、現在もほとんどのソーラーカーが同じ形をしています。近年、ソーラーカーは時速100km/hでの高速走行になり、薄型・高重心の特性から走行時の不安定が招く事故が発生しています。
本チームは、5年前の設立時にこの経緯を踏まえた上で、新しいコンセプトのマシンを製作することにしました。大会レギュレーションの範囲内で、なるべく実用性を取り入れた低重心・4輪化のマシンを製作しています。新車両は、実用性というキーワードから、PRACTICEと名付けました。

充電作業をするメンバー 砂漠の砂まみれになる車両

前回大会への取り組み

ミスミ:前回の大会で工夫した点を教えて下さい。又苦労した点はありましたか?
斉藤さん:国内大会で優勝してから世界大会への出場まで、期間は1年しかありません。限られた時間の中で、企画・設計・製作までを行う必要がありました。
チームは、企画からはじめて、車体重量や車両バランスなどの具体的な数値目標を定めて設計に入りました。設立時に掲げたビジョンをもとに、さらなる性能向上の具体的な数値を出しました。
製作した車両をオーストラリアへ搬送するには1か月かかります。さらに、現地では簡単な調整しかできません。日本で試走をする期間も設けました。このように、国内大会と違い、短期間で進める必要がありました。一方、限られた日数で、砂漠の過酷な環境下で長距離を走行をする信頼性が必要になります。
時間のかかる大きな車両ユニットをもとに、製作時に数回のフィードバックをかけて部品の組み直しも行いました。この結果、世界大会では車体の故障がなく、信頼性と安全性を確保してレースを展開できました。

ミスミ:坂井さんは如何ですか?
坂井さん:1号機の車体重量は230kg(バッテリーを含む)でしたが、新機体は151kgの大幅な軽量化に成功しました。設計目標の160kgをさらに下回ることができました。
車体製作は、静岡県御殿場市にあるカーボン成形を行う会社(GHクラフト)の社宅に住み込みをさせて頂いて、カーボン成形をしました。一方、ボディー成形以外の作業は、東京で他のメンバーが行っていました。双方向に連絡を取る必要があり、また、ボディーへの組み付け作業も回数が限られていました。異なる場所で図面を共有して作業を進めました。
低重心化かつ強剛性の超軽量ボディーを完成させることができました。

ミスミ:池田さんは如何ですか?
池田さん:オーストラリアの砂漠地帯では、風、雨、湿度、温度など、過酷な環境で電気システムが動作する必要があります。また、メンテナンスのし易さも考えなくてはなりません。
新機体では、各電気要素をモジュール化することで、故障時の交換を簡略化して、レース中に作業時間の短縮を図るように工夫しています。とくに、各モジュールの接続端子など、耐候性や耐衝撃性を考えて組み上げています。

ミスミ:稲葉さんは如何ですか?
稲葉さん:太陽パネルは温度が上昇すると、効率が下がります。ボディーをヒートシンクのような機能を持たせることで、走行中の冷却効果を狙いました。太陽パネルはラミネートされます。ラミネート、太陽パネル、ボディーの熱膨張は縮む、伸びると違った特性をします。
メンバー全員で、1mm以下の精度で貼り付けを行いました。接着方法や接着材など、材料選定に工夫をしています。

ミスミ:長澤さんは如何ですか?
長澤さん:世界大会の予選で、2位というライムラップを出しました。私が予選時のドライバーを務めました。ドライバーは、車と人とのフィードバックを知る役目です。ひとつひとつの作業の正確性がレースの信頼性を上げると考えています。
本チームはタイヤをホイルに入れる装置を開発しました。その開発は、ミスミの汎用部品で仕上げました。タイヤを正確にリムに組み込むなど、細かな点に注意を払っています。

ミスミ:渡邉さんは如何ですか?
渡邉さん:車体の重量配分が重要です。ドライバーの私は、メカニックも担当しました。車体の重心位置、ステアリングギヤ比、トレッド、ホイールベースなどなど、さまざまな設計要素があります。
車体レイアウトの1分の1モデルをつくり、PDCAのサイクルを繰り返しました。あわせて、カーボン成形にも加わり、ドライバーとして車の異常を早期に発見できるように、一連の作業になるべく加わるようにしています。

ミスミ:前回の大会は統括するとどのような大会でしたか?
斉藤さん:これまでにない、新しいコンセプトの車両を、チーム一丸となって製作しました。開発プロセスをしっかりと考えて、各担当が一連の作業を熟知してPDCAサイクルで製作していけました。とくに、新しいコンセプトの低重心化は、車体の足回りなどにこれまでとは違う負担が伴います。
また、オーストラリアの砂漠では最高気温42℃を一日中走行して、強風や砂、過酷な環境がマシンに負担をかけます。そのなかで、我々が製作したマシンは、信頼性と安全性を確保できました。
我々の1号機と比較して、31%もの低燃費化を実現することができました。

斎藤さん 酒井さん 稲葉さん

今後の目標

ミスミ:最後に、今後の目標について教えてください。
斉藤さん:世界へのチャレンジは、はじまったばかりです。
チーム設立から、大学としてのイノベーションを意識して活動をしてきました。卒業するメンバーは自動車会社や電機メーカーなどへの就職が決まり、社会で活躍しようとしています。
今後も、後輩を育てて、日本の技術を世界へアピールしていきます。応援をよろしくお願いします。

ミスミ:この度はインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。